『ただいまー』 「おかえりなさいー」 今日は早めに部活が終わったため、珍しく夕方に帰宅できた。 玄関で挨拶すると、リビングの方から光の声が。恐らくテレビでも見ているのだろう。 二階へ上がり、荷物を置き着替えを済ませ、一階のリビングに向かうと予想通り光はテレビを見ながらノートパソコンをいじっていた。 『ん、光ただいま』 「お疲れ様っすわ。今日早いんですね」 『顧問のセンセの都合でさぁ、早く部活終われたんだ。ラッキー』 部活が嫌なわけではないが、オフ日はあるに越したことはない。 うきうきした様子のまま、喉が渇いたため冷蔵庫の中を覗く。と、白と青系からなる特徴的な塗装の缶を発見した。 そういえば、マザーがカルピスソーダの安売りしてたからケース買いしてきたって言ってたっけ… 炭酸好きの私にしてみれば嬉しいことこの上ない。 冷やされていた二本のうち一本を手に取り、冷蔵庫のドアを閉めた。 『光ー、カルピスソーダ飲まない?』 「ん、お願いします」 『あーいよー』 グラスを二つ用意し、均等に液体を二等分する。 空き缶を流し台に置き、光のいるリビングへと運んでいった。 『ほい、一丁お待ち』 「ん、おおきにです」 軽く会釈しグラスを受け取った光の隣に腰掛け、少しテレビでも見て休憩しよう、と一口飲みながら液晶に視線を移した…が、すぐに違和感を覚えグラスを見つめる。 『…んん?』 味は、確かにカルピスだ。炭酸特有のしゅわしゅわ感もある。が、しかし… 『(何か味、おかしくないか…?)』 爽やかな味に混じる、何とも言えない口に残るモワモワ感。 そう、それはまるで…アルコールのような… 『…まさか』 グラスをテーブルに置き、急いで先程空き缶を置いた流し台に向かった。 乱暴に転がっている空き缶を手に取り、よく書いてある文字を見ると… 『カルピス……サワー…!?』 モ ロ 酒 じ ゃ な い か 慌てて冷蔵庫の中を覗くと、冷やしてあったもう一本にはしっかりと【カルピスソーダ】と記されている。 外装ほぼ変わらないのに普通サワーとソーダ並べて置きますかお母様っ…!!! 謎のマザーの天然っぷりに呆れつつ、台所から光に声をかけた。 『光ーっ、それアカン、アカンやつだ。ソーダとサワー間違えちゃったんだよすまん…酒だから飲ん、じゃ……』 そう言ってる途中に、光の様子の異変に気付く。 速足で再びリビングに向かい、光に近づく。 と、私のグラスの隣に置かれている空のグラスを発見し、一気に冷や汗が流れた。 『ひ…光くーん…??』 恐る恐るぼーっとパソコンの液晶を眺める光の顔を覗きこんだ。 そこにあったのは、目を潤ませ頬を赤らめている、トロンとした表情の光の顔だった。 あ、時既に遅し。 back |