蒸し暑い正午。



ツナの家へと足を進めていた獄寺隼人は、賑やかな商店街通りには不釣り合いな異様な気配に眉を潜めた。


明らかな殺気。

しかしそれほど強い気は感じられない小さな気配だった。


(小物か…)


隼人は面倒臭さそうに眉を寄せた。
とりあえず進路を変え、誘い込むように人気のない路地裏へと進む。


コツ、コツ、と背後からゆったりとした足音が近づいてくる。
厭に余裕な雰囲気に多少の苛つきを感じつつ、懐から静かにダイナマイトを取り出し身構えた。

しかし、


「っ!?」


背中に感じていた殺気と気配が突然消え、隼人は慌てて振り向いた。




それと同時、
背中に冷たくて固い物が宛がわれ隼人の動きが止まった。

殺しの経験も豊富な隼人にとって、それが銃だと理解するのにあまり時間はかからなかった。


「こんにちは、スモーキン・ボム」


背後から聞こえた声はまだ若い。
しかしあまりにも冷たい響きを持った声音に、隼人の背中に冷たい汗が伝った。
殺気や気配も、さっきは抑えていたのか、今は比べ物にならない程強くピリピリとしている。



小物どころじゃない

こんなの、化け物だ。






「テメェ、どこのマフィアのヤツだ。狙いは十代目か?」


低く唸るような声で隼人が口を開く。それくらい力強く喋らなくては語尾が震えてしまいそうだった。いや、震えていたかもしれない。

しかし後の人物は質問には答えず、背中に宛がっている銃口を更に押し付けた。


カチャリ、と引き金を引く音が隼人の脳に響く。








「Addio.」








平和な商店街に、隼人の押し殺した叫び声が微かに響いた。


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