Prolog



メフィストside


最近面白い噂を耳にした。
ドイツのとある村で“水神様”と呼ばれ信仰されている悪魔がいると。昔自分が拠点にしていた国というのもあり、少し調べてみることにした。

「上級悪魔が肉体を得るために生け贄…か」

しかもその村には聖水晶があるときた……これは何やら面白いことになりそうだ。少し様子を見てくるか。

それは単なる気まぐれの筈だった。

ちょっとした好奇心から、自らの足でその村を訪れた。村の外れの洞窟に子供が集まっていたので、犬に化けてコッソリ紛れ込み話を聞いた。
どうやら、生け贄に選ばれてしまった妹に聖水晶を飲ませるらしい。
これは予想外の展開だ、大人ならそんなこと思いつきもしないだろう。子供ならではの発想だ、大胆なことを考えるものだ。
面白くなってきた、祓魔師を派遣するのはもう少し遅らせよう。そうだな……子供が生け贄となる当日が良いだろう。悪魔が子供に憑依して暫く様子を見てから突入するか。その方が盛り上がる。

「あれ?わんちゃんどうしたの?」

おや、この子は確か…子供達を纏めていたリーダーの妹……つまり生け贄に選ばれた少女か。中々愛らしい顔をしている。他の者は気づかなかったのに、よく私の存在に気づいたな。

「今お姉ちゃん達は作戦会議中だから、邪魔しちゃ駄目だよ?」

そう言って私を抱き上げながら、少女は柔らかな笑みを向けた。
………これは周りの男が放っておかないだろうな。現に今私以外にも、少女の笑顔にやられた少年が何人かいた。将来が楽しみだな。



そして当日、私は他の祓魔師より早く村へ訪れ、海辺の神殿でバレないように身を潜めていた。
生け贄にされた少女は悪魔に憑依されたが、なんだか様子が可笑しい。なんと、憑依されたにも関わらずピンピンしているではないか。
どうやら悪魔に憑依された筈なのに、人間のままのようだ。これは………悪魔が聖水晶に吸収された?だが気配が人間と悪魔両方混ざっているな。
大人達が騒ぎに気づいて少女を捕獲しようとした。しかし少女は防衛本能からか、無意識に大量の聖水を生み出し、大人達を波で出口へ追いやっていた。

これはッ……!!
私はタイミングを見計らって少女の前に現れ、待機させていた祓魔師の部隊に突入の合図を出し、今助けにきた様に見せながら、少女の能力を確認しようとして……驚いた。
少女の傍にいるだけなのに、私の壊死していた肉体の一部が、微弱ではあるが再生されている………?

素晴らしいッ!!上級悪魔を養分にして聖水晶と融合した新たな能力を生み出している……こんな幼い少女が!!

恐らく聖水晶は彼女の身体に溶け出して彼女自身と同化している。そして聖水晶そのものと言える少女が、悪魔に憑依されるどころか吸収したことによって、可笑しな体質となってしまったようだ。
聖水が出せることから邪を清める力は残っているようだが、上級悪魔を吸収したことにより、癒しの力が人間以外に悪魔まで治癒出来るようになってしまった。
こんなあべこべな体質見たことがない!これは傑作だ!!人間と悪魔どっち付かずの身体と能力!
新しい玩具を見つけた喜びで興奮が抑えられない。


この少女おもちゃが欲しい。


悪魔に恋愛感情なんて無いが、ここまで誰かに執着するのは初めてだ。

「初めまして、セレネさん。私の名はメフィスト・フェレス、以後お見知りおきを☆」

さぁ、新たなゲームの始まりだ。
この少女を堕とす為なら、どんな手段も厭わない。ハニートラップでも何でも利用してやる。
そう決意し笑みを浮かべながら、私は少女の手の甲にキスを落とした。


To be continued…
*R3/1/28 執筆。



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