刺激的な毎日



ディオside


俺の朝は、いつもセレネの悪戯から始まる。
男の部屋だというのに、人が寝てる間に忍び込み、寝起きドッキリを仕掛けてくる。
寝る前に鍵をかけても難なく侵入してくる。
お嬢様なのにピッキングが出来るのか?淑女としてどうなんだそれは。一体何処でそんなものを憶えて来たんだ。
仮にもお嬢様だぞ?淑女ともあろうものが寝ている男の部屋へ入るのはどうなんだ?何故誰も咎めない?
使用人達は「セレネだから仕方ない」といった風に俺達を見守るだけで、寧ろ微笑ましげに温かい目を向けてくる。
一頻り悪戯が終わると、セレネが予め用意していた紅茶の蒸し時間になり、モーニングティーを勧めてくる。しかもそれが美味いのだから文句の一つも言い様がない。

今日も部屋へ入ってきたと思ったらバッと掛け布団を捲られ、驚く間もなく温かい濡れタオルで無理矢理顔を拭かれ、怒りのまま追いかけようとするとテーブルとソファの足に張られていたロープに引っ掛かって転けてしまい、予め床に置かれていたクッションに顔を埋める羽目になった。
クッションの上にはメモが置いてあり、「ドッキリ大成功☆」の文字が。
閉めきったままのカーテンで部屋が薄暗くなっているとはいえ、こんな仕掛けに引っ掛かったことにもムカつくが、態々クッションを置いてあるという変な気遣いにも苛ついてくる。

「アッハハハッ!!気持ちいいくらい見事に引っ掛かったね!」
「セレネ…貴様ァッ……」
「フフッ、ごめんって。私なりの朝の挨拶とスキンシップだよ、おはようディオ!立てる?」
「…………ああ」
「よっと……丁度紅茶が出来たみたいだね。一緒に飲もう!」
「フンッ、誰が貴様の淹れた紅茶など……」
「そう言いつつも、いつも美味しいって言って飲んでくれるじゃん」
「チッ……本当に美味いんだから仕方ないだろう」
「フフッ、人の良いところは正直に褒めるとこ、私は好きだよ。今日はミントティーにしたんだ!眠気覚ましにスッキリ出来るよ!」

そう言いながら、セレネは蒸らし終わった紅茶を予め温かくしておいたカップに注ぎ、レモンの輪切りと蜂蜜を加えた。
清涼感のあるスッとした香りと、レモンと蜂蜜の甘酸っぱい香りが交わり、食欲とも違う……飲欲とでも言うのだろうか。凄くそそられる匂いだ。
不服ではあるが、セレネに勧められるまま飲んでみる。
朝からあんなに酷い悪戯を受けたというのに……コイツの淹れた紅茶を飲むと、全てがどうでも良くなってしまう。
俺にとって屈辱的なことを毎日されているのに、何を言っているんだと思うだろう?だが………


それくらい、コイツの淹れる紅茶は美味いんだ。


「美味しい?」
「…………ああ、美味い。チッ、お前は一体何がしたいんだ。悪戯したり邪魔するかと思えば親しげに接したり、本当に……何なんだお前は」
「うーん…私はただ、本当の君を知りたいだけだよ。君が玉の輿を狙ってるのは分かってるけどさ……敵対するより仲良くしたいんだよ、私は。
そりゃあディオはプライド高くて気性荒くて、短気でキレやすくて乱暴なとこあるけど……」
「おい、それは貶してるのか?」
「だってホントのことじゃん。でも…でもさ、良いところもあるって、知っちゃったから。
ただの悪人じゃないって、知っちゃったから。
だから……もっと知りたいんだ、君のこと」

そう言って、ふにゃりとした笑顔を向けてくるセレネを見て、計画関係無しに……欲しいと思ってしまった。
悪戯好きで邪魔ばかりしてくるかと思えば、無邪気に笑いかけてきて優しくしてくる。気まぐれな猫の様な、この女を……


「まぁ、悪さしたら今まで通り容赦しないけどね?悪いことしたら、その分倍返しさせてもらうよ♪」


…………前言撤回しても良いだろうか。
「このお転婆娘をどうしたものか」と溜め息をつく俺を見て、セレネは楽しそうに笑った。




君が欲しい。
(この感情の正体を、俺はまだ知らない)

*R2/11/3 執筆。



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