三度目の人生



「ほら見ろあの髪、真っ白だ」
「本当気味悪いわ、あんな子産むんじゃなかった」
「では、私が引き取っても宜しいですか?」
「「え?」」



家の中で静かに座る子供が、此処に一人。
騒ぐこともなく、音を立てることもなく。
両親に怒られまいと、部屋の片隅に縮こまり、体操座りをしてジッとしている。
部屋に子供用の玩具は一切無く、ゴミ置き場として使われていた。
目に光は宿っておらず、ただ空中にいる羽虫をジッと見つめるだけ。


そこへ、場違いな白いピエロが現れた。


「こんにちは、廻さん☆」
「………あぇ…?」

消え入りそうな掠れた声。
3歳にもなって、ろくに言葉を発せないほどに成長が遅れている。
少しでも力を入れれば、すぐに折れてしまいそうなガリガリに痩せ細った体。

「漸く見つけたと思えば……まさかここまで酷いとは。本当に貴女は昔から家庭環境に恵まれませんねぇ。余程運が悪いんでしょうね、この私に魅入られるほどに☆」
「あぅ…?」
「何のことかさっぱりといった顔ですね、首を傾げる姿も愛らしい☆
しかし……なんですかこの部屋は!!鼻がひん曲がりそうなくらいの悪臭ッ!!潔癖症な私にとってこの部屋は最悪ですよッ!!魑魅魍魎まで湧いてるじゃないですかッ!!」
「うぅぁ……」
「いえ、貴女のせいではありませんよ?あの馬鹿両親が悪いんですから。そうそう、名前が無かったようなので私がつけさせていただきました。やはり廻が一番しっくりきますね☆
おや、脱線してしまいましたね。私の名はメフィスト・フェレス、貴女を引き取りに来ました」

子供はその言葉の意味がよく分からず、キョトンとしている。

「ふむ、3歳児には難しかった様ですね。では単刀直入に言いましょう。
…………私は貴女が欲しい」

それを聞いた子供は、ハッとした顔で目を見開いた。まるで、同じ言葉を聞いたことがあるかの様に。
その反応を見たメフィストは、ニィ…と口元に笑みを浮かべる。

「おや、全ての記憶を失くしたわけじゃないんですね。記憶喪失みたいなものですか。いえ、此方の話ですから気にしないで下さい。
それで…どうします?貴女の返事を聞かせて下さい」

メフィストがそう言ってしゃがみこみ手を差し伸べると、オズオズと両手で掴み、自身の頬に擦り寄せた。その行動に驚いたメフィストが子供の顔を覗き込むと、安心しきった顔で嬉しそうにしている。

「ククク……可愛い反応をしてくれますねぇ。私のことを全て思い出したワケではない様だが、本能では理解しているらしい。
返事はOKということで宜しいですね?まぁ、断られても連れていく予定でしたが。貴女とは前世での契約がありますし☆」

そう言って不穏な言葉を呟くと、メフィストは子供を抱き上げて、いつもの呪文を唱え始める。

「そろそろこの不潔な汚部屋から退散するとしますか。養子縁組の書類手続きはまた後日に。それでは行きますよ?Eins・Zwei・Drei☆」

ボフンッ!とピンク色の煙と共に、二人の姿は消えた。部屋に残ったのは、散乱しているゴミ山に集る羽虫だけだった。


To be continued…
*R2年 6月19日 執筆。

後書き
1話タイトルが既にヒントになってますが、何があったかはまだ明かしません。
プロローグの両親と違って今回の親は最悪ですね。
子は親を選べないの典型的なパターンです。
メフィストは一体どんな契約をしていたんでしょうね?それが分かるのはまだまだ先です。

次回、おっ風呂♪おっ風呂♪バ〇ルのおっ風呂☆
「この次も、サービスサービス!」
「いやお前誰だよ」



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