Prolog



この世界はとても美しい…見てごらん、あの夕日を。これから、辛いことや悲しいことを沢山経験するだろう。
でも、決して諦めないでくれ。
生きていれば、嬉しいことや楽しいことも沢山ある。綺麗なものにだって沢山出会える。
だから、私達がいなくなっても、どうか死なないでほしい。生きて、生きて、生き続けるんだ。
そうすれば、いつかきっと幸せが訪れる。
だってほら、世界はこんなにも…



……そう言って、私の両親は死んだ。



私は両親の言葉を信じて、生き続けた。
私の姿を見ても普通に接してくれる、唯一の理解者を失っても。生きて、生きて、生き続けた。

「やーい白髪ババアッ!!」
「ちょっとー本当のこと言ったら可哀想じゃーん」

どんなに辛いことがあっても

「兄さんも義姉さんも若いのに、こんなすぐに亡くなるなんて……やっぱり無理にでもこの子と引き剥がせば良かったんだわ」
「きっと呪いよ、こんな気味悪い子を庇ったりするから…」

親戚に何を言われても

「ババアが学校来てんじゃねぇよ!」

耐えて

「お前のせいで飯が不味くなるんだよッ!!」

耐えて

「あんたなんか引き取るんじゃなかった!!」

耐え続けた。

「保険金掛けておけば良いんじゃない?」
「そうね、いつか死んだときに初めて役に立つわね」

心の軋む音が聞こえた。


「お前の存在自体が罪なんだよッ!!」
「さっさと消えろ!!」

私の心にヒビが入っていくのを感じた。



……もう、限界だと思った。



この世界は美しいと、両親は教えてくれたけど。
私がどんなに頑張っても、私の周りは汚れきっていて。妬みと嫉みの化けの皮に包まれた、人間達ばかりで。



「ほら、さっさと飛び降りろよ」
「あんたがいなくなれば世界が救われるのよ!」

私がいなくなれば、世界が救われる…?

「何を言っているの?それは貴方達の方でしょう?
人を貶めることでしか自分の優位性を保てない。
人を傷つけることでしか自分の精神を安定させられない。
そんな愚かな奴等の為に、何故私が死ななければならないの?」


もう、限界だ。
口から本音が漏れてしまうほどに。


「なッ…!!煩えッ!!生意気なんだよ化け物のクセに!!」

ドンッ……

「あ…」



下へ下へと、落ちていく。
なんて呆気ない最後だ、あんな奴に突き落とされて終わりなんて。
どうせあいつらは私が自殺したとか言って誤魔化して、罪から逃れるんだろう。
親戚の叔母さんは悲しまずに喜ぶだろう、保険金掛けるって言ってたし。
両親はああ言ってたけど、私はこの世界は醜いと思う。

こんな世界、いっそ失くなってしまえ…



そう思っていたのに、見えてしまった。
何処までも青い、綺麗な空が。



ああ、本当だ。
両親が言っていた通りだ。
醜い奴等は沢山いるけど、世界・・は美しいんだ。
じゃあ、この世界は消えちゃ駄目だ。
もし、もう一度生まれ変わることが出来たなら…



「何処か遠く…この醜い奴等のいない、綺麗な人達がいる世界に生まれたい」



そう願いながら、私は下から伸びてきた闇に呑まれた。



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