SHORT | ナノ



I kind of you and no good me



サンジと恋人同士となって1ヶ月が経った。
男の人と付き合うなんて人生で初めての事で、というか恋人同士になったらサンジは何か変わるのかと思っていたのだが。

「んナミすわ〜ん!!!ロビンちゅわ〜ん!!!」

私というものがありながら彼は変わらずの調子である。あれが彼らしいと言えばそうなのだが、彼女としてはいい気分ではない。

かと言って私は彼にとって良い彼女なのかと聞かれたら、はい勿論です、とは返せない。

相変わらず私の恥ずかしがり屋な性格は健在で、サンジから何かアクションがあると逃げてしてしまうこともしばしば。
本当に私が彼の彼女で良いのだろうかと自問自答する日々。




「ダメだな、私。」
「どこがだ?」

今日は不寝番の為展望室で悶々と考えていると、ポロッと口から出てしまった独り言に返事が帰ってくる。

声のする方を振り返ると愛しの彼が立っていた。いつも羽織られているジャケットは無く、ワイシャツのボタンは2つほど外されネクタイは緩められていた。

本当にいつもいつも見事なタイミングで現れるなと思いつつ、いつもより出ている首筋が色っぽくてドキドキする。

「サンジ、」
「どこがダメなんだ?」
「...独り言なの。聞かなかったことにして。」

わかりました、と暖かい紅茶を差し出すとサンジはそのままベンチに座る私の右隣に腰掛けた。

「ありがとう。...寝なくていいの?」
「さっき少し寝たからな。」
「もっと寝なよ。」
「...もしかして俺邪魔?」

邪魔な訳無いじゃん、と言いながら隣にサンジが座っているという事に鼓動が早くなる。

「名無しちゃん...」

来た、と思うと同時にサンジの大きくて綺麗な右手が私の左頬を包むとそのまま自分の方へと顔を向かせる。
少し見つめ合い、恥ずかしくて私が視線を外すとサンジは空いた左手で煙草を口から離し顔を少しずつ近づけてくる。

煙草の香りが鼻を掠めると次の瞬間にはサンジの唇が私の唇に重なっていた。
数秒後にそれは離され、お互いの息遣いが聞こえるくらい静まり返っていた。

未だに目が合わせられない私の髪を優しく撫ぜると、サンジは左手にある煙草を携帯灰皿へと押し込んだ。
その動作を見ているとサンジの長い両腕が伸びてきて、私の首の後ろへと回され抱きしめられる。

「...好きだ。」
「...わ、私も。」

私の言葉を聞くとサンジは体を離し、両手で私の両肩を優しく掴むと再びキスをした。
先程のキスとは違い唇を重ねては角度を変え、深くなっていく。

私の唇にあったサンジの唇は次第に場所を変えて首筋へと降りてくる。

「......ん、」

唇なのか舌なのか分からないサンジのそれがくすぐったいと感じると肩にあった手が力を増して私を押し倒した。

「...さ、サンジ...」
「.........」

ここで拒否してしまったら、私は何も変わらない。拒否されてもサンジはいつも優しく、ごめんな、と謝ってくれた。
彼は何一つ悪くないのに。

バクバクうるさい心臓を他所に、今日は彼に身を任せてみようと目を瞑って待っていると背中に腕を回されそのまま起こされた。

「サンジ...?」
「悪い、また調子乗っちまった。」

そろそろ朝飯の仕込みしねえと、とサンジは私の頬に軽いキスをすると立ち上がる。

「俺起きてるから名無しちゃん少し寝てくれ。また後でな。」
「え、あ...うん。」

いつもなら私が恥ずかしいから、と拒否するまで続けるのに。サンジに違和感を覚える。

「(もしかして、嫌われた...?)」

この1ヶ月をとてつもなく後悔した。
サンジの優しさに、甘えすぎたんだ。

どうしよう、と彼を追いかけるか悩んだ挙句、邪魔になってしまうと思い朝食が済んだら話そうと地平線から昇ってくる太陽を見つめながら少し涙ぐんでいる自分が情けなくなった。





「プリンセス、朝食が出来ましたよ。」
「......、サンジ...!!」

おはよう、とエプロンをしたサンジの顔がドアップでそこにあった。
いつの間にか寝てしまったようで窓から見える空は青くなっていた。

びっくりして起きると、来れそうか?とサンジが手を差し出してくれた。その手に自分の手を乗せると優しく立ち上がらせてくれる。

「...おはよう。」
「おはよう、名無しちゃん。今日も可愛いなあ。」

その言葉にまた胸がドキ、と音を立てる。
毎日言われているのにまだ慣れない。
それと同時に数時間前の事を思い出す。

「サンジ、」
「ん?」
「あの、さ...夜、なんで...あそこでやめたの...?」

すごく恥ずかしい事を言っているのだが、それよりもサンジに嫌われる事の方が嫌だった。いち早く彼の気持ちを知りたかった。

「あ、...え?いきなりどうしたんだ、名無しちゃん...」
「...嫌いにならないで。」
「何言ってんだ?」
「私、サンジになら何されても、良いから。だから、お願い...嫌いにならないで...」

言っていると涙が止まらなくなる。
自分でもなんて事言ってるんだろうと思いながら、サンジの気持ちに縋るように言葉にする。

「名無しちゃん、前にも言ったろ?俺が名無しちゃんを嫌いになるなんて死んでも無えって。なんでそう思うんだ?」
「いつも私...恥ずかしくて、その、拒んじゃうから...サンジの彼女として、ダメだなって。」
「夜もそう言ってたな。」

そうゆうことだったのか、と流しっぱなしの私の涙をサンジは自らの手で拭うと、私は堪らずサンジの胸の中へ飛び込み背中へ腕を回す。彼もそれに応えるように私の背中へ長い腕を回して抱きしめてくれる。

「嫌われると思ったのは俺の方だ。いつ自分で理性を抑えられなくなるか...そしたら名無しちゃんを傷つけちまうと思ったからよ。」
「そんな事、無いもん...すき...サンジ、大好き。」
「.........名無しちゃん。そんなクソ可愛い事言って、後悔しても知らねえぞ?」
「しないよ...」

耳元で囁かれ、顎を掬われるとサンジの片方しか見えない優しく色っぽい瞳と目が合う。

「名無しちゃん、君は俺にとって最高の彼女だ。...愛してる。」
「恥ずかしすぎる...」

その言葉を口にした瞬間私の唇はサンジのものによって塞がれ、私は早くなりすぎた鼓動を耳で感じながらサンジのエプロンをギュッと握った。





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