2 | ナノ
 



結局言っちまった。つか充はいつまでバカ笑いしてんだよ!

「ふひーっひっひっひっ!京がっチョコっ、手作りっ、ふはは!」

「もう黙れよ…」


愛嘉がチョコを寄越す筈もねぇし俺が用意するしか…って、あ?何で俺とあいつがチョコを渡し合う事になってんだ?

「それで?チョコを作っちゃう乙女な京ちゃんは愛嘉ちゃんからお返し貰え、いだっ!」

ニヤニヤ笑いながら近付いてくる充が目障りで思わず脛を蹴った。大体聞かなくても分かってんだろ。

「あいつがお返しなんざ用意するわけねぇだろ」

あいつにとっちゃただチョコが食いたかっただけだろうし…まずあいつが誰かの為に何かを用意する姿が思い浮かばねぇ。

「何だよー、折角それ奪おうと思ったのによー」

「何奪うの?」

「うぇっ!?まっ愛嘉ちゃんっ!?」

「な、何でこんなとこにいるんだよっ」

しかも当たり前のようにいつの間にか現れてやがるし…!驚いただろ!
直ぐ様抱き着こうとする充をあしらって俺の目の前にコンビニで売ってそうなマシュマロを突き出してきた。

「な…んだこれ」

「何って、マシュマロ。見て分からないんですかー?」

「いや分かるけど何で」

「何でってホワイトデーの定番はマシュマロだろ」

バカですかー?とか言ってる愛嘉の顔が赤い。それにマシュマロを受け取る時に触れた手が冷たい。
まさかこんな寒い中わざわざコンビニまで行って買ってきたのか?……用意すんの忘れてたのか。
でもこいつがわざわざ用意するだけ凄い。

「あん、がとよ」

「ちゃんと残さず食えよ」

「まっなかちゃあん!俺にも俺にもっ!」

さっさと帰ってく愛嘉を追い掛ける充に呆れつつちょっと優越感。早速食おうと袋を見たら裏に「来年もよろしく by愛嘉」って文字があった。
あいつ、無駄に字が綺麗だな。

「仕方ねぇな」

充をあしらってる愛嘉を眺めてあんまり好きじゃねぇマシュマロを口に運んだ。
お返しを貰えんのならチョコをやるのも悪くねぇな。



fin.







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