朝ご飯を食べ終わって京が観たかったらしい映画のDVDを何本か観ながらお昼を食べて……ってオイ。
おかしい。もう時間は3時を過ぎてるのにチョコを作ろうとしない。
すっかりまったりしてるよ。
「あ、そういややる事あった」
おっ、遂に…て思ったのに京は何故か部屋に向かってる。
お前が向かうべき場所はキッチンだろ。
「邪魔するなよ?」
最後にそう言ってドアが閉まるとリビングが静かになった。
まさか本当にチョコ作らない気?
あー、なんか急にバカらしくなってきた。
何で期待したんだろ。京は朝はっきり用意してないって言ってたじゃん。
「京のバカ。ヤリチン。ハゲろ」
ソファーに寝転がってそのまま瞼を閉じた。
俺は心のどこかで、京からチョコが欲しいって…まさか。
京のチョコなんかいらない。別にチョコなら何でもいいし。明日自分で買うからいらないいらない。
「ん、んぅ…」
いつの間にか寝てた…あれ?
体に毛布がかかってる。それに甘い匂いが…まさか。
「京…?」
「げっ、もう起きたのかよ」
げっ、て何だよ。起きちゃ悪いか。
ソファーに座ってキッチンの方を見ても見えない。毛布を床に落として立ち上がり京がいるキッチンに近付いた。
「……チョコ」
「ったく、出来るまで寝とけっつの」
「俺に?」
「1日中物欲しそうにチラチラ見てたくせによく言う…欲しかったんだろ?チョコ」
ぽんって頭を撫でられて無意識に頷いてた。
別に京のが欲しいんじゃないから。ただチョコが欲しくて、それをくれそうなのが京で、それでそれで…
「つか元々やる予定だったんだよ。バレないように作ろうと思ってたのにお前までサボるし」
「うるさい。俺の所為にするな。で?出来た?」
「いや、まだだ。あと冷やして固まってから切ってココアまぶして…っておいっ!」
バットに流し込まれたチョコを指で掬う。それを京の唇に塗ってから引き寄せて舐め取った。
チョコの味がする。凄く甘い。
「おいしい…」
自然に、本当に自然に笑みが零れた。それぐらい美味しいんだよ。
京がちゃんとチョコを用意してくれたのが嬉しいとかじゃないから。
俺の反応に一瞬驚いたような顔をした京にぐいって抱き寄せられてまたキスした。
「んっ、…ねぇ、ヤらない?」
「どうせ拒否権ねぇんだろ」
そんな事言いながらニヤニヤしてる。満更じゃないくせにほんと素直じゃない。
冷蔵庫にチョコを入れてまた自然と唇が重なる。
もうチョコの味はしないのにキスはまだ甘い。
仕方ない、チョコが出来るまではこの甘いので我慢してやるか。
fin.
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