今回も例のごとく、ガトーショコラを作ってくれてる。
獅希のガトーショコラは本っ当に美味いんだよな。バレンタインに食うのは特に美味いと思う。
出来たらこのまま一緒に食うことにしたから今ガトーショコラに添える用のクリームを作ってる。
「なぁ、俺にも手伝わせろって」
「あ…そういえばリビングの方にマドレーヌあるぞ。お前がこの間気になるって言ってた新しいケーキ屋の。好きなだけ食っていいぞ」
「うぉっマジか!」
ほんのりレモン味らしいからマドレーヌも気になってたんだよなっ。
さすが獅希だ。洋菓子通だな。
さっそくリビングのソファーに座ってマドレーヌを味わった。
美味ぇ…!
また獅希の策略にはまってるなんて気付かずにマドレーヌを味わった。
「おぉ…店のみたいだな」
「そうか?」
ガトーショコラの上に乗って落ちたクリームの演出とかプロっぽい。
美味そうだな…早く食いてぇけど、何で獅希の分はねぇんだ?
「獅希のは?」
「俺はいい。好きなだけ食え」
いいって言われても…今回は俺も手伝って獅希と一緒に食おうって思ってたのに。
全く手伝えなかったけどな。
それならせめて食うのは一緒に…
「獅希、口開けろ」
「何で…」
「いいから、あーんって開けろ」
既に口許に一口分のガトーショコラを運んでる。
多少強引だけどこうでもしないと獅希は遠慮して食いそうにない。
「早く、クリームが零れそうだから」
「……分かった」
漸く折れて素直に口に含む。
フォークを獅希から離して今度は俺も一口食べた。
あー、美味ぇっ!
「美味いだろっ?」
「そうだな」
作ったのは獅希なのに自信満々に笑って聞くと小さく吹き出して獅希も笑って答えた。
相変わらず獅希の笑った顔は見慣れてないからかドキドキする。
「もう一口」
「おう。自分の分も用意すりゃ良いのに」
そんな事を言いながら結局ずっと俺が獅希に食わせて俺も自分に食わせた。
「次はホワイトデーだな。また何か作るか」
「それなら俺がお返しに何かつく「いい」
言い終わる前に断るなよっ!
でも今日の獅希は珍しくずっと微笑んでるから何も言えねぇ。
「また俺が用意するから一緒に食おうな」
「おうっ。今度は獅希が俺に食わせてくれよ」
冗談混じりに笑いながら最後の一口を口に含んだ。
早くもホワイトデーが楽しみだ。
獅希も楽しみにしてくれるといいな。
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