「なぁ、俺も手伝いたい」
「駄目だ。怪我でもしたらどうする」
「…大丈夫だって」
断言は出来ねぇけど。
獅希は毎年チョコをくれるから今回は手伝おうと思ってエプロンまでしたのによぉ。
全く手伝わせてくれない。
怪我したら余計獅希に迷惑かけるって分かってるけど日頃の感謝の意味も込めて…一人で獅希へのチョコを作るなんて出来ねぇから手伝いたいなって、思ったのに。
「…じゃあお前に頼みたいことがある」
「本当かっ?よしっ、何でも任せろっ」
「実はチョコを買いすぎて困っている。だからそのチョコを食ってくれないか?」
「おうっ」
獅希が指を差した先には何枚かの板チョコがある。それぐらい俺にかかれば楽勝だっ!
寧ろチョコを食えてラッキーなぐらいだ。
早速包みを破いて黙々食べていく。
同じ味の板チョコでも色んなメーカーがあって食べ比べてみたり。
カレーみたいに色んなメーカーのものを混ぜた方が濃くが出るとかか?奥が深いな。
もうすぐ食い終わるし、次は何を手伝おうか…
「よし、後は焼くだけだ」
「えっ」
獅希の声に反応したらレンジの蓋を閉めてる。
おまけにさっきまで散らかってた筈のシンクがいつの間にか片付いてる。
やられた。
これは手伝おうとする俺対策用に用意されたチョコだったのか。
食ってる間に作り終えるなんて…まんまと引っ掛かった!
さすが獅希だな。俺の扱いに慣れてるっつーか何つーか…
最後の板チョコを食べながらしみじみと感心した。
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