3 | ナノ
 



「…本当に似合ってるか?」

「もっちろん!」


これは嘘じゃないよ。
ちょっとスタイリッシュなサンタの衣装を着崩してて凄く似合ってる。
不機嫌そうに眉間に皺寄ってるけどそこがまた格好良い。
イケメンは何着ても様になるなぁ。
それに比べて俺は…。
トナカイの衣装は着ぐるみパジャマみたいなやつなんだよね。
フードにトナカイの顔と角があるのに店員さんオススメの丸い赤っ鼻も付けちゃってる。
どう見ても夏希勝ち組だね!
俺なんてマヌケな格好してんのに似合ってて泣きそう!


「すごく格好良いよ」

俺の言葉にやっと機嫌が治ってきたのか嬉しそうに笑ってる。
その顔もやっぱ格好良い…あああ!何か急に恥ずかしくなってきた!
このイケメンめっ!

「優も似合ってるぞ」

「それ喜んでいいの?」

「ああ。可愛い」

普段は駄犬なのに、こう改まったらホント格好良い。
そういや、あんだけ不満そうだったのに俺がサンタさんになってって言ったら着てくれたんだよね。
サンタさんになりきって白い袋まで用意してくれてさ。
そんな優しいところにもキュンってして心臓ドキドキしてきたけど今は落ち着け俺。
顔まで赤くなっちゃう!


「優、クリスマスプレゼント」

「え?うわっ!」

「……恋人っぽい贈り物ってこれしか思い浮かばなかったんだよ」

いやいや恥ずかしそうに言ってるけどこればかりは俺の方が恥ずかしい!
さっきから持ってたサンタの袋から赤と白のバラのおっきな花束。
恋人にバラの花束ってベタだろぉ。

「綺麗…っ!」

花束をまじまじ見てたらカードが入ってる。
見てみたら『I love you.』ってベタだなおい。
でもベタなやつほどキちゃうんだよね。

「……優、顔真っ赤」

「うっ、うるさいっ」

「可愛い奴」

腕の中の花束を奪われて抱き締められた。
まさか俺がリア充になる日が訪れるなんて。
俺もそっと抱き締めたら夏希の腕の力が強くなった。
く、苦しいっ…けど、ほっこりする。



「配役、これで良かったかもな」

「さっきまであんなに拗ねてたくせに…」

「優のサンタに虐げられたかったけど改めてトナカイの優見たら可愛い」

「鼻赤いけどね!」

「顔もな」

それはお前が無駄に男前を発揮してるからだよ!
そう言おうとしたけど夏希の顔が近付いてきたから大人しく黙った。
来年こそはサンタの格好してあげよう。



「俺からのクリスマスプレゼントは俺…なーんちゃっ、てぇって待て!こらっ脱がすなっ!」

「もう我慢出来ませんご主人様!」



fin.







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