ノブナガとフェイタンがエッチしないと出られない部屋に閉じ込められる話

ノブナガ=ハザマとフェイタン=ポートォは呆然とした。何度見ても、目の前の扉にはそう書かれているのだ。

「……どーすんだこれ」
髷を揺った頭を抱えるノブナガ。
離れ眉を寄せて顔をしかめるフェイタン。
「ワタシイヤね」
「アホか、オレだって嫌だわ!!何が悲しくてオメーなんかとしなきゃならねェんだよ」
咄嗟に怒鳴るノブナガではあるが、噴き上がったところでどうしようもないこともわかっていた。

固く閉ざされた扉に鍵穴とおぼしきものはない。隠し扉などはないか探したがそれらしきものもないし、扉や壁に耳を押し当てても向こうの音は何も聞こえない。
部屋に備え付けられたものはベッドがひとつ。窓や通気口のようなものはなく、壁はつるりとした素材で出来ていて、登って天井を調べてみることもできそうにない。
試しに壁を斬りつけてはみたが、一瞬火花が出ただけで傷一つつかなかった。
この部屋が何者かの念でできていることは間違いない。発動条件は何だろう。何処で罠にかかった?術者は具現化系か?いや、対象を部屋に転送するとしたら放出系?特質系?……まぁ、今はそんなことはどうでもいい。

ともあれこの部屋から出るためには。フェイタンとセックスする必要がある。
他に抜け道があるとしても、おそらくそれが一番手っ取り早い。

「…………しゃーねぇな」
ため息混じりに呟き、ちらりとフェイタンに視線を向けるノブナガ。
「ダメ。ヤダ。ゼタイ無理」
数歩後退り、嫌悪感剥き出しでノブナガを睨むフェイタン。
「じゃどうすんだよ。死ぬまでここにいろってのか?」
「……」
「言っとくがゴメンだぞオレは。永遠にテメーと二人きりで過ごすくらいなら、一瞬だけ我慢した方が遥かにマシってもんよ」
「…………」
「ハッキリ言うぜ。オレはやる気だ。目つぶって適当に腰振って、ちゃっちゃと済ましてここから出る。で、こんなふざけた場所に閉じ込めた野郎をぶっ殺しに行く」
「………………」
フェイタンはしばらく黙っていたが、やがてぼそりと言った。
「……仕方ないね」

仕方ない。そう。仕方ないのだ。
軽く白目を剥いて、頭をガリガリと掻き、ひとつ深く長く息を吐くノブナガ。
「フィンクスには黙ってろよ」
「言うわけないね。アイツあれでかなりヤキモチ妬きよ。お前としたなんて言たらボコボコにされるね。最悪殺されるかも」
「……」
ノブナガは、恋人を盗み食いされたかの男が頭から湯気を出して怒り狂うさまを思い浮かべてげんなりした。
理不尽極まりない。なにも好き好んでするわけではない――というより嫌々、仕方なく、必要に迫られてやるというのに、なんで殴られたり殺されたりの心配をせねばならんのか。

(カーッ。めんどくせェ)
ここでごちゃごちゃ考えても何も解決しないので、舌打ちと共に改めて覚悟を決める。
「で、どっちが女役やんだ?コインで決めりゃいいのか」
「ワタシでいいね」
即答するフェイタン。その顔には「いいからさっさと済ませてくれ」とありありと書かれている。
「ほぉ。もっとグダグダ揉めるかと思ったぜ」
「ワタシだて早く出たいし。それにノブナガのチンコ、きとフィンクスより大きくないね。入たところでどうてことない」
「悪かったな」

フィンクスのナニを、しかも勃起した状態を見たことがない身としては比べようがないし、興味もないし、考えたくもない。
それにこれから奴と穴兄弟になり、このチビに奴と自分の食べ比べされると思うと気分が悪く、情けないやら悲しいやらで何ともやりきれない気分になる。
まぁ……そんなことを言ったところで事態が好転する訳でもないし、文句を垂れる時間が惜しい。
ノブナガは着流しの帯を解くと、刀を外し、着物を脱いで股引き一枚になってベッドに腰かけた。

「おい。早く来いや」
「わかてるよ」
少し離れた場所からノブナガが脱ぐさまを見ていたフェイタンは、むすりとしてベッドに乗り上げ、ノブナガの膝に座り、抱きついて、猫のごとく胸に頭を擦り寄せてくる。
「何の真似だよ」
「いつも通りしてるだけね」
いつも?いつもフィンクスとこうしているわけか。
想像したくない光景が脳裏に浮かびそうになり、慌てて思考を遮断するノブナガ。
「フェイタンよ、オレは別にイチャイチャしたいわけじゃねぇぞ。お前はパンツ剥いてケツの穴貸してくれりゃいいんだ」
黙ってノブナガの膝から降りて、上着をたくし上げ、ベッドの上で下着ごとズボンを下げるフェイタン。色白で小ぶりながら筋肉質に締まった尻が露わになる。

「おー、綺麗なモンだな。ケツ毛が一本も生えてねェ」
「うるさい。バカにしてるか」
「褒めてんじゃねぇか」
膝をついた拍子にあらわになった縦割れの肛門はつるつるで、縁が淡いセピア色をしている。
「そうやてジロジロ見るのやめる」
「わかったわかった」
「あとペチャクチャ喋るな。うとおしいから」
「ハイハイ」
これからまぐわう相手に対して鬱陶しいとは。
まぁ、別にフェイタンとのスキンシップを楽しみたいわけでもないので構わないが。
ノブナガはフェイタンの引き締まった腰を抱き寄せ、仰向けに転がして双丘を左右に割った。ひくひくと収縮する小さな孔は少し緩んでいる。
フィンクスに可愛がってもらって間もないのだろうかと思いつつ、その中心に指を差し入れると、イソギンチャクの如くキュッと吸い付いてきた。

(フィンクスはここに突っ込んでやがるのか)
妙な感慨深さを覚えつつ指を抜き差ししながらフェイタンのようすを見ると、息を詰めながら小さく震えていた。感じ入っているようではあるが、本人はそれを認めまいとしているらしい。
どうせやるなら気持ち良くしてやった方がいいだろう。ノブナガはフェイタンの鎌首をもたげ始めた陰茎を握り込み、ゆっくりと上下させた。
途端に腰を跳ねさせて声を発するフェイタン。普段からは考えられないような甘い声を上げて、「しまった」とばかりに手で口を塞ぐものの、一度開いた口は止まらない。
だくだくと湧き出る快楽を逃すよう頭をふり、腰を浮かせてシーツを蹴る。
ノブナガの知るフェイタンは、端的に言うと可愛げのないチビだ。この無愛想で物言いがきつく皮肉っぽくて何とも小憎たらしい生き物は、フィンクスと二人きりの時はこんなふうにしているのだろうか。
そんなことを考えているうちに、ノブナガ自身もむらむらと欲情してきた。股引きの中で痛いほど張り詰めたものが解放を求めて脈打っている。

「おい」
「……何?」
「しゃぶれ」
自分の陰茎を引っ張り出して、フェイタンのマスクをずり下げ、亀頭を唇に押し付ける。
一瞬戸惑いを見せたものの、素直にそれをくわえ込むフェイタン。
舌先で鈴口を舐めた後、ちゅうっと音を立てて吸われる。すぐにでも達してしまいそうになるのを必死に堪え、フェイタンの頭を押さえて前後に揺さぶると、苦しそうな呻きが漏れる。
構わず喉奥まで突き入れて、えずいたところでずるりと抜き出し、また押し戻す。フェイタンの目から涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。
しばらくそんなことを繰り返してフェイタンの口腔を犯し、頃合いを見て引き抜くと、咳き込んだフェイタンが恨めしげな視線を向けてきた。
「何だよ。お前興奮してんじゃねーか」
――案外乱暴にされるのが好きなのかもしれない。
見ればフェイタンのそれは、腹につく程反り返っていて、先端から透明な粘液が滴り落ちている。
ノブナガはうっすら笑うと、フェイタンの腕を引いて起き上がらせ、ベッドの上で四つ這いの姿勢を取らせた。
そして背後から覆い被さるようにして、熱く猛ったものをフェイタンの菊座にあてがい、一気に貫く。

「ぎ、」
突然のことに悲鳴じみた声を上げ、全身を強張らせるフェイタン。構わず抽挿を開始する。狭い腸管を無理やりこじ開けていく感覚を楽しむ。内臓を押し上げる圧迫感と痛みに喘ぐ姿を見下ろす。
こつん、と亀頭が行き止まりにぶつかるのを感じた。直腸S状部を突かれた衝撃で、フェイタンの背筋が仰け反り痙攣する。そのままぐりぐりと押し付けてやれば、嫌々するように首を振る。
そんな反応を楽しみながら、ノブナガはフェイタンの背中にぴったりと胸板を合わせて、片手を前に回した。いっちょまえに鍛え上げた胸を揉みしだいてやると、フェイタンは切なげに鼻を鳴らし、ひとつ甘い吐息を漏らした。
そうやって互いに快感を追い求めながら、ノブナガはフェイタンの耳に囁く。

「なぁ」
「……今度は何か」
「フィンクスと較べてどうだよ」
フェイタンは少しの間黙っていたが、やがて掠れた声で答えた。
「別に普通ね」
「普通ってこたねェだろ。例えばアイツのより小せぇとか細いだとかよ」
自虐気味に言うノブナガに、フェイタンはフンと鼻を鳴らす。そして続けた。
「ま、フィンクスの方が大きいのは確かね」
ハイハイそうですね。と思った瞬間、「けど」と付け足されて、ノブナガは思わず動きを止めた。
「ノブナガの固くて奥ゴツンゴツンする。これはこれで悪くないよ」
振り返りもせず呟く声。それはノブナガの脳髄を蕩かすには十分すぎる威力だった。

「そうかいそうかい。そりゃ良かったぜ」
腰を掴んで律動を再開する。パンッ、パァンと肌を打つ音が響く。
ふとフェイタンの顔が見たくなり、肩を押せばあっさり仰向けに転がった。先ほどまでの不機嫌面は何処へやら、紅潮した顔はすっかり快楽にとろけて、切れ長な目尻は下がっている。口元からは唾液が垂れていて、普段からは想像もつかないような淫靡な表情をしていた。
普段もこれくらい可愛げがあればいいのに。
そんなことを思いつつ腰の動きを早め、絶頂へと上り詰めていく。フェイタンは一際高く声を上げて達したが、ノブナガは構わずそのまま攻め立てた。

――おめでとうございます。無事にミッションクリアです――

やがてノブナガがフェイタンの中に精を吐き出すと同時に、人工音声が響いた。
陰茎を引き抜いて解放してやると、フェイタンは虚脱感に苛まれたようすで、のそのそと服を身につけ始めた。
事後の余韻に浸るわけでも、愛の言葉を交わすでもない。ただ淡々と服を着るだけの二人。

「……おい」
声を掛けると、フェイタンが気怠げに振り向く。
少しだけ考えて、ノブナガは言った。
「ここであった事は他言無用だ。変な夢でも見たと思って、誰にも言わずに忘れちまえ」
「ハハ。言えるわけないね」

いつも通りの調子でそれだけ言うと、フェイタンはさっさと部屋を出て行った。
続いてノブナガも外へ出る。そこには部屋に閉じ込められる前の風景が広がっている。
そしてひとつ深い溜め息を吐いて、件の部屋の術者を探し出して始末してやらねばと決意を固めるのだった。

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