溺愛ビギナー
「………っ」
レオは、うなされて目を覚ました。
「レオ…?大丈夫…?」
レオが呼ばれた方に顔を向けると、心配そうに瞳を揺らすアンがいた。
アンはレオの左手を、両手で包むように握っている。
「あ…、俺……」
「昨日の夜、会議が終わった後倒れたんだよ。風邪だって。疲労が原因で免疫下がってるって、ロベールさんが」
アンの話を聞きながら、ぼんやりと昨日のことを思い出す。
なかなか頭が回らないのは、熱があるからだろう。
久しぶりにひいた風邪が結構しんどくて、レオは苦笑した。
「食欲はある?ポリッジとホットレモネード、今ちょうど持ってきたんだ」
ありがとう、と小さく微笑んで、ベッドに横たわっていたレオはゆっくり体を起こした。
「まだちょっと熱いかな」
そう言ってアンが、ふぅー、ふぅー、とレモネードを冷まそうと息を吹きかける。
こんなことをしてもらったのは幼い頃以来で、なんだか胸がくすぐったい。
「はい、どうぞ。…ん?レオ、どうしたの?」
「いや…なんか嬉しくて」
レオが心底嬉しそうな笑顔で、カップを受け取る。
ほんのり顔が赤いのは、熱のせいだろうか。
温かいレモネードが、身体に染み渡っていく。
「飲みながらでいいから、熱測ってみよう?」
レオが頷くと、アンは何のためらいもなくレオの胸元のボタンを外し、そばに置いてあった体温計を挟ませる。
やましいことなど起こるはずなんてないと分かっているのに、そんな思いとは裏腹にレオの胸は高鳴っていく。
そんなレオに気づかないままアンはレオの首に触れ、額に触れた。
「…やっぱ熱い。つらいよね…少し貰ってあげたいよ…」
そう言ってアンが、レオの額に自分の額をコツンとくっつけた。
「っ、アン……ちゃん」
「レオ…、何かしてほしいことある?何でもいいよ、私に出来ることなら」
そんな可愛らしい言葉を吐くアンを抱きしめたくなって、レオの空いた片手がアンに伸ばされた、その時…
prev ←|→ next[ 1/2 ]|Leo|TOP|Novels|