Sleeping Beauty

 




「はい、アン様。このハーブティー、良く眠れるんだって」




そう言ってユーリがカップを差し出す。

それを受け取り顔を近づけると、心が安らぐような香りに包まれる。






「最近眠れないって言ってたから。疲れ過ぎて、脳が興奮状態で寝つけないのかもよ?」




「いつもありがとう、ユーリ。嬉しいな」




「アン様のためなら」






アイドルを彷彿とさせるような眩しい笑顔で、ユーリがウインクする。








「それでさ、実は俺、明日お休みもらってるんだ。だから、明日はメイドとジル様がアン様のお世話をするからね」





「えっ…ジルも?」





「うん。ほら、ジル様って万能だから。執事の仕事くらい朝飯前でしょ。逆に、ジル様に出来ないことなんて、あるのかなぁ」







ユーリが真面目に言うものだから、アンは思わずクスリと笑みをこぼした。





















     ◆    ◆    ◆





















―コンコン。







「…………」














―コンコン。







「………………」












いくらノックしても応答がない。

大方、まだ眠っているのだろうと察したジルは、咳払いをひとつしてドアノブに手を掛けた。






「アン、入りますよ?」






やはり応答のない部屋の主にため息をつきながら、ジルは扉を開けた。

部屋はシン…と静まり返り、人影も見当たらない…、…ベッドの膨らみを除いては。






ジルは特に足音を忍ばせることもなくベッドの方へ進み、シーツに包まる"山"に手を伸ばした。







「……まったく」






そっと捲ったシーツから覗いた、穏やかで安心しきった寝顔。

ジルはアンのその顔を見て、口元を綻ばせて仕方なさそうに呟いた。










「……ん…」




朝陽の眩しさが閉じた瞼越しにも滲みたのか、アンが小さく身じろぎしたと思ったその時、その白い肩が素肌を晒した。








「…こんなに無防備では、何をされても文句は言えませんね」








ジルの言葉はアンに届かずに消えた。

危ういジルの理性とは真逆な、すーすーと整った寝息が部屋を満たしている。




ジルはアンを包むシーツを摘まみ、それをゆっくり、ゆっくりと引き下げていく。

アンが目を覚まさないよう、慎重に腰の辺りまで下げた。




すると、目の前に現れるのは、白いシルクのネグリジェを纏ったアンの丸まって眠る姿。

左向きで寝ているアンの、右肩の肩紐が肩からずれ落ちている様が、やけに色っぽく見えた。



ジルは息を呑むと、更にシーツを引き下げていく。







「………っ」







ヒップラインまで捲れてしまっているネグリジェの裾が、ジルの熱を煽り始める。





爽やかな青空と輝く朝陽、その二つの条件がジルの理性をかろうじて繋ぎ止めていた。



そう、今は朝。

いくら愛しい人のこんな姿を見てしまったとは言え、こんな早朝から盛ってはいられない。

それに、誰が来ないとも限らない。

表面上、私は教育係で、彼女はプリンセスなのだから。



そんな思考がジルの頭を駆け巡る。


しかし、払拭しきれない煩悩は男の性か、ジルはごくりと喉を鳴らすと、再びアンへと手を伸ばした。







「少し…だけ、ですよ……?」







まるで自らに言い聞かせるように呟かれた言葉が、部屋に溶けていく。





左向きに寝ているアンの肩をそっと押し、仰向けにさせてみる。

息を殺しながら、その表情を窺うと…



すやすやと眠ったままだ。








そして、ジルは更に、きちんと肩にかかっていたネグリジェの左側の肩紐を下ろす。







大丈夫、起きる気配はない…。












両肩紐がずり落ちたことによって、アンの白いネグリジェはいとも簡単に引き下ろすことが出来るようになっていた。


ジルは胸元の中央部分に人差し指を引っ掛けて、ぐっと引き下げた。




仰向けでも主張する二つの膨らみは薄らと影を作り、その豊満さを感じさせる。

先端部分は布に隠れた状態だったが、ジルの指が胸元の生地をぐっと引き下げているため、そこは危ういほどに深くV字に露出されている。



その中心へジルはゆっくりと顔を寄せていき…舌を這わすように舐め上げた。

自分が舐めた部分が濡れて光り、白い素肌が厭らしさを纏う。







「……アン………」










普段なかなか触れることが出来ない反動か、衝動のままに動いてしまう自分の身体が恨めしい。






 
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