これが僕らの『何時も』

十代目が突き指をされた。
その原因を作った奴はボッコボコにしたが、日常生活のフォローは出来ていない。
利き手の人差し指と中指を同時に突き指されているため、箸が握れないのだ。
お母様のお弁当を抱えてしょんぼりする十代目を見て、俺は無力な自分を恥じた。
これは、どうやったら、十代目を助けられるんだ………!

「綱吉、」

教室に響いた静かな声。
柚木だ。
上履きで床を蹴りながら、ゆっくりと十代目の元へ歩くと、目の前の椅子をかたん、と音を立てて向きを変え、そしてあっさりとそこに座った。

「ほら、お弁当広げて、綱吉」
「へ?」
「突き指したんだよね? 私が食べさせてあげるから、」
「柚木?!」
「え、本当? 助かるよ、静玖」
「十代目?!」

何をあっさりとお礼しているんですか?!
思わず十代目を見ると、十代目はさっと柚木にお弁当を渡していた。
それを受け取った柚木は、軽く目を細めてからそれをぱかりと開ける。
………嫌な予感しかしないのは、俺だけだろうか。




☆ ☆ ☆ ☆




野球部の集まりから帰ってきたら、教室の空気が凍っていた。
それなのに一部分だけやけに甘ったるい空気を醸し出してるからなんだこりゃ、って感じだ。
そっちをちらっと見ると、甘ったるいそこの中心は、ツナと静玖。
………なんで甘ったるいんだ?

「はい、綱吉、」
「あー」
「ん」

ぱくん、とツナが何かを食べる。
それは静玖の箸からだ。
え………? なんだこれ、えぇ?!

「あ、山本、お帰り」
「や、こんにちわ、山本君」
「………何、やってんだ?」
「何って、あれだよ。綱吉が突き指したって聞いたから、お弁当食べさせてるんだけど?」

それがなに、と言わんばかりの静玖はそのまま首を傾げ、ツナのお弁当からおかずを挟んだ。
はい、あーん、と言う前にツナが口をぱかりと開ける。そこに静玖が箸を突っ込んで、それからゆっくり抜き取った。
………いや、だから。

「フォーク辺り貰ってくれば良いんじゃねぇの?」
「あー、そっか。そんな手が合ったっけ。まぁ、良いよねぇ、綱吉」
「うん」

早く、と左手で静玖の右手首の裾を引っ張ったツナは、そのまま口を開けた。
静玖は心得た、と言わんばかりにツナの手を握り、それからツナのお弁当のおかずをつまみ上げた。
ツナの瞳がきらきらと輝き出す。
はむ、とそれを食べたツナは嬉しそうに笑って、それから静玖をじぃ、と見た。

「なに?」
「いや、超直感もないのに良く俺が食べたいのがわかるなぁって」
「そりゃあ、綱吉のことだもん。───私がわからないはずないでしょ」

さも当たり前のように、そして何もなかったかのように甘ったるい言葉を囁いた静玖は、輝かしい笑顔を浮かべた。
どろっと、甘く重たい空気が教室に満ちる。
………いやいやいや。

「絶対おかしいから、それ」
「「え?!」」

重なった幼なじみの声に、俺と獄寺のため息が重なったのは言うまでもない。

ほんと、勘弁してくれ!












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お待たせしました。
他者からみた主人公と綱吉のバカップルな空気をお送りしました。
最初は守護者全員の視点で書こうかと思ったのですが、やっぱり綱吉の身近なこの二人に絞ってみました。
綱吉相手には勘で行けちゃう主人公です。
リクエスト、ありがとうございました!



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