雲揃いて雪覆い

※ 未来から帰ってきたよ




「ねぇ、早くソレを離しなよ」
「僕が君の言うことを聞く義理がないね」
「ひゃっ、」

するり、太ももを撫でられ悲鳴を上げると、目の前の雲雀先輩はちゃきりとトンファーを構えた。
あああ、綺麗なお顔が台無しです、雲雀先輩………!

「ね、子雪も言ってあげよ」
「なっ、何を?」
「今の雲の守護者より僕が良いって」

ちぅ、と唇近くをアラウディさんのそれが触れ、身体がぴしりと固まった。

「柚木静玖!」
「うわ、はい、何ですかっ、雲雀先輩…………!」
「コレと僕、君はどっちを選ぶのさ」

どっちも選びたくない!
そうは言えずに泣きそうになる。
どうしてこうなっちゃったのかな。
そう考えながら、少し前に思いを馳せた。




☆ ☆ ☆ ☆




雲雀先輩から呼び出されたので応接室に行けば、そこには最初は雲雀先輩だけだった。
そこで誘われるままにお茶をして、ケーキうまー、とかほこほこしてたら、気が付いたらアラウディさんが応接室にいたんだ。
初代雪───雪月さんは女装する男性だったから『雪』が女の子なのがちょっと意外みたいで、なんだか気に入られて、気が付いたらアラウディさんの膝の上に私が居た。
え、あれ、え?!

「あっ、アラウディさんっ?!」
「ん、良いね、子雪」

何が?!
鼻先を人の耳の裏にそっと撫でつけたアラウディさんはそのままそこをぺろりと舐めた。
ひぃっ!!

「そこのロリコン、何してるの」
「何って、食べてみようかなって」
「何を、何を?!」
「何って、君を」

ぺろりと再び舐められる。
ひぎゃあああ!

「いい加減にしなよね」
「わぁっ」
「早くリングの中に帰りなよ、この亡霊」
「亡霊はD・スペードだよ。僕じゃない」

アラウディさんの膝の上から、私の腕を掴んで雲雀先輩が退場させてくれる。
ほっとしたのも束の間、そのまま今度は雲雀先輩の膝に座らされた。
あああ、なんで、雲雀先輩まで対抗してるの?!

「ひば、雲雀先輩!」
「そんな亡霊より僕を選ぶのは、当然だよね?」
「はい?!」
「青二才が………」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」

なんで臨戦態勢取ってるの、この2人………!
応接室の、雲雀先輩が使う机に下ろされたので、トンファーと手錠を構える2人を見据える。
ちょ、なんで争ってるの、この2人………!!

「どうしたの、子雪」
「どうしたもこうしたも、2人が争ったら学校が壊れるじゃないですか!」
「………それは良くないな。屋上に行こうか」
「えええ?! ここは普通争うのを止めるべきなんじゃ………」
「何言ってるのさ、子雪。僕に敵前逃亡しろって言うの?」
「そうじゃなくって!」

ばしばしと机を叩く。
なんでわからないかな、この戦闘狂達めっ!!

「なんで2人の戦いに私が巻き込まれるんですか?!」

思わず机に立って2人に人差し指を突きつける。
すると2人はきょとん、と目を丸くして私を見てきた。
え、ちょ、なんで私をそんな目で見るの?!

「ふぅん、そう。わからないんだ」
「ア、アラウディさん?」
「ちょっと柚木。天然? わざと? それとも、本気?」
「へ………?」

とん、とアラウディさん、雲雀先輩が机に手を置いた。
なので思わずしゃがみ込むと左右それぞれから手を握られる。
それから引っ張られる様にして机から降ろされた。

「あの………?」
「わからないならわからせないとね」
「………?!」

かしゃん、と左右の手首から金属音が聞こえた。
え、と目を丸くしてからきょろきょろと視線を巡らせてその音の発信源を見る。
アラウディさんの手錠と、雲雀先輩のロール………匣兵器的な意味での『アラウディの手錠』。
って、なんで拘束具………!

「ちょ、先輩、アラウディさん?!」
「こいつと一緒っていうのが気に食わないけどね」
「この男と一緒なのが気に入らないけど、」
「え、あの、え………?!」

まず雲雀先輩が言って、次いですぐにアラウディさんが呟く。
どさりとソファーの上に寝転がされて、慌てて身体を起こせば手錠がぐっと引かれる。
金属が肌に擦れて、痛みから思わず悲鳴が漏れた。

「いいね」
「は………?」
「いい悲鳴だ」
「?!」

ぺろり、アラウディさんが唇を舐める。
その姿があまりにも艶やかで美しい。

「ちょ、あの冗談は些か、」
「冗談? 柚木静玖。僕が冗談でこんなことをすると思う?」

ついっと雲雀先輩の目が細められ、鋭い目がさらに鋭くなって獰猛さを増す。
あれこれ、私、危ない………?!

「いや、あの、すみません、アラウディさん、雲雀先輩。私、これからちょぉぉぉぉっと予定が!」
「「駄目」」

駄目?!
身を引くとかしゃんと金属が擦れた音が響く。
いや、あのこれは、

「僕が可愛がってあげるよ、柚木静玖」
「ひぇっ」
「こんな青二才には出来ないことを教えてあげる」
「やっ、あのっ」

伸びてくる2対の手に、私はきゅっと目を閉じる。
く、雲属性なんてだいっきらいだー!!












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雲属性2人、とのリクエストだったのですが気が付いたらこうなりました。
手錠二つ、逃げたくても逃げられない状況ですがさてさてどうなることやら、です。
後は皆様のご想像にお任せします。
リクエスト、ありがとうございました!



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