※ 幼少IFの設定です
※ 捏造万歳失礼します
※ ひらがなばっかりちゅうい!
※ ちょろっとオリキャラ!
「らい、らーい!」
学校から帰って、ボンゴレの城に足を向けた。
幼子特有の呼び方で呼ばれたので振り返れば、やはり小さな姫君がこちらに向かってとたとたと走ってきていた。
「如何した、雪の嬢」
膝を折って、嬢と視線を合わせるようにすれば、嬢はほわり、と頬の色を微かに赤くしてから俺に手を伸ばしてきた。
それを甘受してから嬢の身体を抱き上げ立ち上がると、あのね、と小さな声が漏れる。
「あのね、らい」
「なんだ?」
「らいのパーパ、かして?」
「父を?」
「うん」
こくん、と頷いた嬢は何か考えがあるのか終始楽しそうだ。
ここで断ったらこの顔が陰る。
其れだけは避けなければ、とそこまで考えて、思わず笑みがこぼれた。
「らーい、だめ?」
「いや。あんな父で良ければ喜んで差し出そう」
「らいのパーパはすてきだよぅ」
「………斯様か」
「だって、らいがすてきだもん」
だかららいのパーパもすてきなの、と笑う嬢の頭を、出来る限り優しく撫でた。
☆ ☆ ☆ ☆
「らいのパーパ!」
「おっ、」
どん、と後ろからタックルしてきたのは主の小さな宝。
小さな衝撃に危うく手の内から書類が落ちそうになったのを耐え、少女が前に回ってくるのを待った。
ててて、と軽やかな靴音を響かせて前に来た嬢が無言で手を伸ばして来たので片手でその身体を抱き上げ、嬢が小さな手を首に回したのを感じてからその身体を腕に座らせる。
「らいのパーパ、おつかれ?」
「いや、大丈夫ですよ。どうしました?」
「あのね、らいのパーパに………ガナッシュさんに、あげたいのがあるのー」
うきうきとした明るい声に思わず笑みがこぼれる。そして疲れも吹き飛ぶ。
きっと、九代目が半ば浚うようにして彼女を日本からつれてきたのは、この癒しを手放せなかったからだろう。
すべてを覆う雪。
何もないかのように、風景も、音も、何もかもを静寂の中に包み隠す。
けれど、ゆっくりと陽に照らされながら、輝きながら雪解けていけば、そこに待ちわびているのは暖かな、春。
雪解け、無くなってしまう。それこそが、『雪』。
だからこそ、手放さぬよう、空から雪が舞い散らぬよう『大空』が囲い込んだ。
まだ年端もいかない少女が背負うには少し重たい『属性』も『使命』も、その資質故に囚われない。
「ガナッシュさん?」
「ん、あぁ、すみませんね、嬢」
ぼんやりと、嬢について、というか雪について考えてしまって押し黙っていた俺を現実に引き戻したのはやはり嬢の幼く、そして拙く紡いだ俺の名だった。
小さな手でぺち、と俺の頬を叩いた嬢は、困ったように眉を寄せ、あ、と呟く。
「ガナッシュさん、いそがしいの? たいへんなの?」
「いえ、そんなことは」
「でも、おつかれ、なの? なら、いいよ」
「何がです?」
「わたしのよーじ、また今度でいいよ」
腕から降りようとする小さな身体を無理矢理抱き留め、腕に力を込める。
確かに疲れているのかもしれない。
なら尚更、この癒しは手放せない。
「それで、どこに行くんです?」
「お部屋!」
「………誰の?」
「わたしの。………ほんとにへーき?」
「えぇ、もちろん」
行き先を聞いたのでそのまま足を進めた。
すると嬢は安心したようにその身体をこちらに預けてくる。
あぁ、やはり、この温もりは癒しだな、と改めて考え、嬢を日本から連れ出してイタリアに連れ帰ってきた九代目に心の中で感謝を述べた。
☆ ☆ ☆ ☆
ティモがわたしにくれたお部屋はとぉっても広くって、ほんとうは1人でつかうのはさびしいの。
でもでも、そんなわがままティモには言えないから、ないしょなの。
だって、そばに居させてくれるんだもん。これ以上、わがまま言えないの。
でも、そうすると、ティモがかなしそうなお顔するの。
ティモのそんなお顔は見たくないから、この間おかいもの行った時に、おかしを買ってもらった。
そういうのなら、まだティモに言えるもん。
だから、らいのパーパ………ガナッシュさんに、きょーは「おすそ分け」、なの。
お部屋ごとにれーぞーこがあるから、その中にしまってあったものを、ザンザスさんが買ってくれた、わたしにはおっきいテーブルとイスに座るガナッシュさんのところまで持ってく。
ちょっとうでがプルプルしたのは、ガナッシュさんにはないしょなの。
わたしがテーブルに行く前に、立ってこっちにこようとしたガナッシュさんは、後で、めっ、です。
「これは、」
「ガナッシュさん、なの」
「え、えぇ。まさしく俺、ですね」
くす、と笑ったガナッシュさんは、笑ったのにどこか困ってる。
あぅ。
「ガナッシュさん、チョコレートのガナッシュさん、きらい?」
そう、わたしがガナッシュさんにおすそ分けしたかったのは、チョコレートのガナッシュさん。
おかし、きらいなのかな? ガナッシュさん、チョコレートのガナッシュさん、きらい、なのかな?
おすそ分け、だめ?
「お嬢」
「はあい」
「チョコレートのガナッシュに『さん』は要りませんよ」
ガナッシュさんとらいだけが呼ぶ『じょう』って呼ばれたからお顔を上げれば、ガナッシュさんが頭をなでてくれた。
それから抱っこされて、ガナッシュさんのおひざの上。
ほえ、と声が口から出ちゃうと、ガナッシュさんが楽しそうに笑った。
う、ガナッシュさん、チョコレートのガナッシュさ………ガナッシュ、きらいじゃない? だいじょーぶ?
「嬢が食べないのに俺だけ食べるのは気が引けますからね」
「???」
「一緒に食べて下さい、嬢」
「! うんっ」
ガナッシュさんにチョコレートのガナッシュのおすそ分け、せいこー!
ガナッシュさんに、お口にチョコレートのガナッシュを運んでもらいながら、わたしはにんまりと笑った。
誰かといっしょに食べるのは、幸せ、だね!
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連載IFでガナッシュさんを選ばせて頂きました。
雷を勝手に親子共演させちゃいましたが大丈夫だったでしょうか?
リクエスト、ありがとうございました!