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指と指を絡めて手を繋ぎ合い、誰も居ない、そして誰も使った形跡の無い部屋で2人で並んで床に座って、お互いの頭と頭を寄せ合った。
綱吉の隣は、暖かくて懐かしい場所。

「静玖」
「ん?」
「俺の話、聞いてくれる? それで、お前の話、聞かせてくれる?」
「うん」

そう断りを入れてから、綱吉はゆっくりとその口を開いた。
マフィアのボスにさせるべくリボ先生が綱吉のとこにやって来た話。
獄寺君が日本に来た理由(獄寺君がマフィア関係者とは知らなかった…!)。
山本君と親友になったきっかけ。彼が今ここで巻き込まれている理由(リ、ボ、先、生………!!)。
骸くんのマフィア殲滅の話(実は重たい話だかったらしい)。
そしてこの間のリング争奪戦。
そうして、

「自分が死んだ未来なんか、知るなんて思わなかった」
「それは確かに」
「静玖はさ、自分の未来、聞いた?」
「ううん、聞いてない」
「そっか」

ちょっと知りたかったな、と笑う綱吉に、そうだね、と短く返した。
確かに、自分の未来の姿がちょっと気になる。
だけどまぁ、どうしても知りたい訳じゃないし。

「静玖は?」
「ん?」
「いつからボンゴレ?」
「………5歳から、かな」
「え゛」
「私がティモ………九代目に会って、これを渡されたのがその年齢だから、そう言うのが正しいのかなって」

これ、と言って綱吉に見せたのは左手中指に輝く『雪』のリング。
綱吉はそれに併せて右手中指を見せてきた。
まあるい形の、『大空』のリング。

「私がティモに選ばれ、彼の手を取ったのは5歳のこと」
「うん」
「でもね、ボンゴレとは殆ど関わってないの。私はあの日から、ずっと手紙のやり取りをしてただけ」
「………あ、それって、」

ピンキーリングの一件の? と首を傾げた綱吉にこくんと頷いた。

「私の文通相手が、九代目だったの」
「………よく隠してたね、それ」
「うん」

だって、家族に知られたって困るもん。
そう呟くことはせず、そっとため息を吐いた。

「それでね、リボ先生が来ること、知ってたの」
「そっか」
「だってあのチラシ制作したの、私だから」
「?!」
「だって、」

子雨が作ったチラシはイマイチだったんだもん………!

「まぁ、チラシはどうでも良いかな」
「そ?」
「うん。………それで? 他には?」
「………骸くんと、お友達になった」
「は?」
「いやだから、骸くんと、」

いい、皆まで言うな、と繋ぎ合った手に力を込められる。
ちょっと青ざめた綱吉が面白くて、くすくすと声を漏らして笑ってしまった。

「それにね、」
「うん?」
「私、スペルビと知り合いなんだ」
「スペル───スクアーロと?!」
「スクア? え、スクアーロ?」

え、だぁれ、と聞けば、綱吉に苦笑された。
どうやらスペルビとスクアーロは同一人物らしい。

「あ、それとザンザスさんとも知り合いだよ!」
「………ザンザスさんと九代目が親子って知ってた?」
「えぇえ!」
「いや、なんで知らないかな」

その方がおかしいよね、と呟く綱吉に、あぁ、だからあの時ザンザスさんはティモを「じじい」って呼んだんだ、などとどうでも良いことを考えていた。
うんうん、納得、納得。

「それで? 他には?」
「んー、」
「あ、」
「んん?」
「まだ言いたくないことがあるなら、それはそれで良いから」
「………うん」

フィーのおしゃぶりの件は、言わなくても良い、かな?
え、えと、何も言ってないのは、えぇと、

「私は、さ。私は、綱吉の外堀には成りたくないんだよ」
「『外堀』?」
「うん、」

なんて言ったら良いのかな。
ぐるぐると思考を巡らせてから、ゆっくりと口を開く。

「あのね、私は、───私がボンゴレと関係があることに、綱吉は関係ないよ」
「え?」
「だから、私のことは気にしなくて良いよ。私は君に巻き込まれたわけじゃない。私がティモの手を取ったの。だから、綱吉は私の事を気にしなくていい」
「………と、言うと?」

こて、と首を傾げた綱吉に、思わず笑みを浮かべた。
………あぁもう、わかってないなぁ、綱吉は。

「綱吉さぁ、十代目に成りたい?」
「え? ………出来れば、成りたくない、かな」
「そう。………だったら綱吉、ちょっとちゃんと聞いて」

よいしょと綱吉と向き合うと、綱吉もこっちを見てきた。
じい、と私を見返す綱吉に、小さく笑む。

「リボ先生が君のところに来た理由は、君を十代目にするため」
「うん」
「リボ先生のことだから、最終的に君の周りの人間を駒にするだろうね」
「は?」
「たぶんきっと、君を十代目にさせるために巻き込んだ人間の名を次々と口にしだすよ………『誰の所為で誰の人生を狂わせたのか』、『その責任を誰が負う』、」
「──────!!」
「そうやって、君を十代目にさせる可能性が無いわけじゃない」

綱吉がボンゴレの後継者でなければ、深琴ちゃんが巻き込まれることも、今この十年後に居る三浦さんが巻き込まれることもなかった。───危ない目に遭わせることもなかった。
だから、その名を出されれば綱吉は十代目に成らざるを得ない。
───だけどね、だからね。

「だから、私のことは気にしなくていいよ」
「え」
「君がマフィアだろうとボンゴレ後継者だろうと関係無い。ティモ───マフィアと関わっているのは『私』が選んだ道だから、『私』に関しては君は気にしなくて良いよ」

綱吉に気にされたら、それは私があの日、ティモの手を取ったことを否定されてるみたい。
あれは私が決めたこと。綱吉は関係無い。
だから、気にしないでほしい。

「───そっか。そういう考え方もあるんだ」
「?」
「リボーンのこと。………そんな風には、考えたことはなかった」
「ちょっと皮肉れた考えたけどね」

杞憂かもしれない。
だけど、考えられないことじゃないから。

「でも、」
「ん?」
「静玖は俺のこと、考えてくれたんだろ?」
「………そう、かな」
「そうだよ。だいたいお前、俺とその他なら基本的に俺を優先して考えてくれるじゃんか」
「うん」
「その事に俺は沢山甘えさせてもらってるよ」
「………うん」

こつん、と鎖骨に綱吉の額に当たる。
甘えてくる綱吉の手を解いて、彼の薄い背に手を伸ばして抱きしめた。

私は、いつまで彼の宿り木でいられるのだろうか。



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