sei il mio tesoro

※ 紆余曲折あってお付き合いした話
※ 原作終了あたり
※ 未来編でのディーノさんの扱いがあまりにもアレなので懺悔して書きました
※ お疲れディーノさん
※ ちょっとだけ主人公がいじめられているような表現がありますが本人これっぽっちも気にしてないです
※ お砂糖3割増
※ イタリア語は適当です
※ ディーノさんがわりとぶっ飛んでる











(うーむ)

どうしよう。
それは音になることなく口の中だけで唱えられたものだった。
とある金曜日、いつも通りささっと帰ろうとしていた私を、黒塗りのお高ーい車で出迎えたディーノさんは、そのまま利用しているホテルの一室のベッドまで私を連れ込んで、寝転がせた私の上に………………ちょうど胸あたりに頭をぽすんと預けて動かなくなってしまった。
制服のスカートに皺が、とか考えなくもないけれど、今はそれはどうでも良くて。
紆余曲折色々ありまくってお付き合いをすることになった年上の男性の行動が、ちょっと良くわからなくて首を傾げる。………いや、実際には傾げづらいので首は動いていないのだけれど。
ちょっと重いけれど嫌なわけではないし、この体勢についても特に気にならないと言えば気にならない。ただ、どうしてこうなっちゃったのかは気になる。
確か、当初の予定では来週にならないと仕事が片付かないとかなんとか、メールが来ていたはずだ。ちなみに私個人としては連絡手段のものを持っていないので、子霧のパソコンを借りて、アドレス取得という面倒なことをしている。ごめんね、子霧。
まぁ、見られて困るようなやり取りはしてないし、ボンゴレのパソコンの方がプライバシーとかなんとかかんとか、その辺りは安心なのだけれど。
後我が家、両親がまだ帰ってきてないので、個人的連絡手段は諸々買えないってのもあるんだよね。なんかほら、日本って血の繋がった、あるいは戸籍の繋がった保護者いないと面倒でしょ。
後はまぁ、まだ不便を感じてないっていうのもあるし。
兎にも角にも、知らされてない来日のこととか、どうしてこうなっちゃったのかとか、その辺りは説明がほしいなぁ、とは思う。
ディーノさんは黙って胸元に頭を預けたままだ。うぅん、どうしたものか。
黒塗りのお高ーいお車に乗っていたことを考えると、一人で来た、なんてことは当然無く、部下の人達と一緒なはずだ。だとしたら、お仕事は一段落着いたのだろうか。
いくらよく日本に来てたディーノさんだろうと、仕事放棄は無いだろう。
………………………ってことは?
とりあえず、胸元にある艷やかな金髪の頭を撫でる。
ぴくん、と指先が反応したけれど、ディーノさんは動かずそのままだった。
………正解かな? どうかな?
左手を彼の肩あたりに添えて、右手で頭を撫でる。
背の高い人って頭を撫でられる機会がないらしいし、私もディーノさんの頭を撫でるなんてこと普段は出来ないので、ここぞとはがりに頭を撫でてあげた。
僅かに音がした方に目を向ければ、ロマーリオさんがすまなそうな顔でこちらを見ていた。悪いな、と言わんばかりのポージングも相まって、苦労してるなぁ、なんて思ってしまう。
よしよし、とディーノさんの頭をたくさん撫でていると、ようやっとディーノさんが動き出した。
ガバッと身体を起こしたかと思うと、ベッドヘッドの辺りに、ふわっふわもふもふなクッションをぽぽいと投げて並べて、寝そべったままそれを見ていた私を引っ張ってそこに座らせた。座らせたというか、寝そべりからちょっとだけ身体を起こしたぐらいで…………180度寝ていたのを、160度ぐらいに身体を起こした感じ。ただ、背中と腰に負担がないよう、クッションをこれでもかと並べたのだろうとは思う。
そんな体勢になった私の、今度はお腹辺りに頭を預けてきたディーノさんは、そのまま腕を腰に回してぎゅう、と抱き締めてきた。
うーん、だいぶお疲れでは。
ちょっと座りが悪いのでもぞもぞと身体を動かすと、回されたディーノさんの腕により力が入る。
嫌がっているわけではないですよ、と伝えるためにぽんぽんと背中を優しく叩いて、すぽっと身体がハマる場所が見付けられたので、動くのを止めた。
ただ、頭を撫でるのは止めない方が良さそうなので、背中を叩いた手をそのままディーノさんの頭に戻して、なでなでを続ける。
よしよし、お疲れさまです。
なんて、気持ちを込めたまま、なでなで。
どれぐらい経っただろうか。ディーノさんの温もりにうっかり寝そうになった辺りで、ディーノさんが再び動きを取り戻した。

「ん、ありがとな」
「いえいえ」

後ちょっとで寝るところでした、と言わんばかりのふにゃふにゃ声に、ディーノさんが眩しいものでも見るような目で笑った。
なんでそんな表情するのかな。
ゆっくりと離れたディーノさんが私に手を伸ばすので、同じように手を伸ばせば、しっかりと掴まれて身体を引っ張られる。
ベッドに改めて座り直すこととなって、まぁ、為されるがままで良いか、なんて思っていたら、ディーノさんはぴっとり引っ付いて座った。

「んん………………」
「ん?」
「近くないですか?」
「嫌か?」
「単純な疑問です」

至極当たり前のようにディーノさんの腕が腰に回ってる。うん、密着具合がアレなのだけれど、嫌なわけではないのだ。
嫌なわけではなくて、ただ、いつもの以上に引っ付いているから、何かあるのかな、となる。
じぃい、とディーノさんを見てみると、なんだかちょっと窶れたようにも見えてきた。
チラッと視線を外してロマーリオさんを見ると、なんだかあの人も窶れたように見える。ただ、遠目だからよく分からないけれど。

「こーら」
「んむ」
「余所見しない。な?」
「してないですけど、で? どうしたんです? 疲れてますよねぇ」
「疲れてる!!!! だから癒やしてくれ!」
「うわっ」

ガバッと抱き着いてきた身体を抱き返して、ぽんぽんとまた背中を叩く。
うーん、身体の方は大丈夫そうだよね。う、苦しい。

「いやー、本当に困った相手でなぁ」
「? はぁ」
「無駄に仕事が長引きそうで、来週の予定も無くなりそうだったから無理はせずに無理して仕事を終わらせてきたから疲れた疲れた」
「待って待って、矛盾が凄い」
「だから、オレたちが困らない程度に無理を押して相手は無理を無理として飲み込ませた? みたいな?」
「いや、それ、恨み買いませんか?」
「ふ、ははっ、オレが?」

至近距離で至極楽しそうに笑う緑色の瞳に、ひぇっと悲鳴を飲んだ。
顔が良いのをちゃんと自覚してほしい。至近距離でそんな顔されたら心拍数が上がってしまう。

「ふはは、顔真っ赤」
「うーッ」
「かわいい」

ちゅ、と彼の唇が耳元に触れる。
ちゃんとお付き合いしているから、何もおかしいことはない。おかしいことはないのだけれど、恥ずかしいのは言うまでもなく。
こ、こういうスキンシップ、慣れるのかな。
きゅっと彼の洋服を思わず掴むと、顔を離したディーノさんが、とんとん、と己の頬を叩いた。

「えっ」
「ん?」
「私も?」
「癒やしてくれよ、可愛い恋人さん?」
「ぐぅ、」

破壊力が高い。もうちょっとこう、恋愛初心者レベルにまで諸々落としてほしい。無理だろうか。
瞼を閉じて、こちらに頬を差し出してくるディーノさんに、うぐぅと、喉の奥で奇声を上げながら、そっと彼の頬に口付けた。
窶れているように見るのに、肌は荒れてはいない。いや、確認の仕方おかしいね。

「っーー」
「ははっ、真っ赤だな」
「もう、ディーノさん!」
「carino!」

なんでイタリア語にしたの!
反論しようとすると、ぎゅっとさらに抱き付かれて、それどころではなくなってしまった。
だから、あのですね、恋愛初心者にレベルを合わせてほしいんですよ! 経験値があまりにも違うってことを理解してほしい。
………………別に、ハグが嫌だとは言わないけれど。
ただ、腰の辺りを撫でるのはくすぐったいから、止めてほしい。

「おーい、ボス。お嬢へのお土産は渡さないのか?」
「あっ、そうだった!」
「お土産?」

なんとなく、………そう、なんとなく、嫌な予感がする。
部屋の隅っこから聞こえたロマーリオさんの声に、ディーノさんがベッドから離れて、ホテル備え付けのクローゼットを開けた。
そこから出てきたのは紙袋、紙袋、紙袋、紙袋エトセトラ………いや、待って?? ディーノさん??

「仕事の移動で車に乗るだろ?」
「乗りますねぇ」
「店の前とか通るだろ?」
「通りますねぇ」
「買うよな?」
「買わないですね?!」

ここまでが服で、靴で、アクセサリー類な、と指を指しながら言ってくるディーノさんに、思わず頭を抱える。
決して、決して彼に常識がないわけではないのだ。ただ、稼ぎの桁が一般人のソレとは違いすぎるし、そもそも異性にものを贈るのを臆さない人だ。
さらに言うなら、『疲れ』が彼のストップボタンを捨てさってしまったのだろう。
それはわかる。わかるんだけどなぁ。
限度があるんですよ、ディーノさん!
ただ、おいで、と手招きされてしまえば、いそいそと彼の傍に行ってしまう自分もいる。

「お前が貰ってくれなかったら捨てるしかないなぁ」
「あーッ、その言い方良くないですね、とっても良くないです」
「買われてすぐ処分の服が可哀想だよな?」
「ディーノさん、とっても意地悪です」
「そうか? まぁ、オレは悪ーいマフィアのボスだしな」

悪ーい、なんてそんな。
まぁ、世間的には悪ーいマフィアのボス(だってマフィアと言ったら悪だろう、と言うのが世間の評価だ)だろうけど、その中身は気のいいお兄さんなんだけどね。
ちょっと疲れちゃうとアレだけど。
中身を見てもいいか確認してから、気になった紙袋に手を伸ばす。
うーん、後でブランド名調べておこう。私の心臓に悪い。

「あ」
「うん?」
「ディーノさんは綱吉と違って超直感持ってないですよね?」
「はは、あれはボンゴレの血のものだろ?」

どうしたんだ、と聞かれて口籠る。まぁ、言っても問題はないとは思うのだけれど、解決………解決? する可能性も出てきたし、別に気にすることでもないしなぁ。解決しなくても特に困ってないし。
黙ったままちら、と視線を泳がせた私を不審に思ったのか、ディーノさんがさらにどうした、と問いてくる。
まぁ、ここは、素直に言ったほうが得策だろう。うん。

「私の『不注意』で学校に着てってたカーディガン捨てちゃいまして」
「不注意」
「はい、『不注意』です」

私のこと虐めたくてウズウズしてた人たちを前に、カーディガンだけ残して教室を出たのは間違いなく私の『不注意』だ。
もう、たかだか隼人君や山本君と仲が良いってだけで人を貶してくるなんて本当に暇だよなぁ、と思う。
まぁ、そこと仲の良い京子ちゃんにはクラスが違えど何もしない辺り、程度が知れてるっていうか、『私』程度には何をしても自分たちが優位に立てるだろうと思っているんだろうな、とは思う。
まぁ、私からしたら『くだらない』の一言で、傷付くことも何もないんだけれど。
ただ、カーディガンを切るのはちょっとどうかと思う。まぁ、最終的に困る結果になるのはあっちだろうから知ったことではないけれど。
いやぁ、刻まれたカーディガンが雲雀先輩にバレたのは困ったことだよねぇ(棒読み)。しかもそれ、雲雀先輩が持っていっちゃったんですよねぇ。いやぁ、とてもとても困ったなぁ(棒読み)。

「『不注意』ねぇ………」

いや、ディーノさん、なんでそこに引っかかるの。
それはもう良いんですよ、終わったことだから!
いそいそと紙袋から出してソレを広げる。あまり派手でなく、暖かそうで、さらに言うなら、制服の色とも合いそうなカーディガンである。ローファーとの相性も良さそうだ。ソックスが黒でも白でも大丈夫そうだし。
ブランドものであることを目を瞑れば、まあ学校に着て行っても問題ないだろう。何かあったら雲雀先輩から言ってくるだろうし、雲雀先輩が何も言わないならそれはOK………校則違反外ってことだし。

「まぁ、そこは恭弥に聞くか」

うーん、綱吉に聞く、ではない辺り、とても引っかかっているようだ。まぁ、良いか。
いそいそとカーディガンを袋に戻していると、ディーノさんが何を思ったのか頭を撫でてきた。なんでなんで。
大きな手で優しく撫でられ、反応出来ずにそれを享受していると、ロマーリオさんがスマホ片手に部屋から出てった。
あれ、良いのかな。ディーノさんの護衛じゃないの?
思わずディーノさんを見上げれば、他は開けないのか、なんて聞かれてしまったので、とりあえず気になるものから開けていくことにした。

結論から言うと、「ディーノさん、当然の如くセンスがいい」。これに尽きる。そして私の好みもほぼほぼ理解してくれている。
カーディガン以外の服も着るのに可愛すぎるとかそういうので気後れしないし(この際金額に付いては目を反らす)、靴も普段使いからちょっと背伸びしたヒールがあるのだって、ぴったり足にフィットするし(サイズの件からは目を反らす)、アクセサリー類の中にあったリュックは私の好みドンピシャだった。ブレスレットやネックレスとかに使われている宝石類を調べだすと胃が痛くなりそうだからベルベットの箱はそっと閉じて紙袋に戻しておいた。
そこまでは良い。いや、目を反らした数々の出来事はちょっとあれだけど、まぁ、そこまでは良いの範囲に入れていい。

「………………………」

ソファーに並べた3着を睨む。
ディーノさんは私の後ろに立って、それを覗くように見ていた。

「駄目だったか?」
「なんでパジャマ系だけで3着あるのかが解せないです」
「好みがあるだろ?」
「そうなんですけどね?!」

胸元にくまちゃんがでーん! と描いてある上下セットのパジャマ。
淡い水色のネグリジェ。これは可愛い。着たいと思うかは別として。もう一度言うけれど、これは可愛い。まぁ、着ないけれど。中学生にネグリジェは些かレベルが高い。
さて最後。一番の問題児はこれである。

「ディーノさんの趣味………………?」
「んー、いや、記憶ないんだよな。これ買った時はオレも疲れがピークだったし」

でしょうね。
3着目―――ひらひらフリルにちょっと透けてる………ちょっと…あの、………え、………えっちなやつです。どう見ても中学生が着るものではないですね、お疲れ様です。いや、お疲れ様でした、買い物した時のディーノさん。

「着るか?」
「着ません!!!!」

って言うか、着るのに伴うだけの中身は育ってないです! まだ成長期の中学生です。
…………………………っじゃなくて!!!

「この3着は受け取れません!」
「だよなぁ」

だよなぁ?!
わかってて持ってきたの?! どういうことなの、ディーノさん?!
………やっぱり疲れてる?
思わずディーノさんを見上げれば、思いの外優しい眼差しでこちらを見ていた。
顔面攻撃力を理解してほしい。攻撃力が高すぎて精神的ダメージがやばい。
えぇ、こんな目立つ人好きで大丈夫? 私、大丈夫?
その内消失しそうだよなぁ、私。

「………………はっ!」
「ん? どうした?」
「ディーノさん、今何時です?! 帰らないと」
「は? 帰らせないが?」
「………………………それならそれで、連絡しなくては駄目では?」

こてん、と首を傾げると、ディーノさんから深い深ぁいため息が漏れた。
む。

「良いですか、ディーノさん。夕飯の有無の報告は早いほうがいいんですよ」
「は?」
「だって、何でもかんでも翌日まで残せるものではないし、多く作るってことはそれだけ手間です。ただでさえ家は今、嵐ちゃんが作ってて、偏食の塊の雲がいるんです。報告大事」
「あいつ偏食なのか」

実は私も知らなかった。
学校では同じお弁当を食べているから、特に好き嫌いがないのかと思っていたら違うらしく、「私の前だから」仕方なく食べていたそうだ。
いや、雲の話は今はいい。そうじゃなくて、

「ディーノさんが居ろって言うなら居ます。そこに異論はないのです。でも、家に帰らず、雲の護衛も振り切っちゃってるのもあるので、やっぱり連絡は入れないといけないんです。私は、あの人たちに『護ってもらっている』立場だから」
「静玖………………」
「と、言っても、私は連絡手段を持たないのですが、」
「そうだな。連絡は入れよう。………………オレからしても良いか?」
「え? あぁ、お願いします」

座って待っててくれ、と言って、ディーノさんはちょっとだけ足をもつれさせながらスマホ片手に部屋から出ていった。
私はそれを見送ってから、ソファーに出しっぱなしだった3着を片付けていく。ソファーの隅っこに座って、一着目に手を伸ばして、固まった。
………………あれ。

「さっきディーノさん、凄いこと言わなかった………………?」

ぽぽぽ、と頬に熱が溜まる。
大人の男の人だ。すんごい台詞だって出てくるだろう。
それにしたって、刺激が強い。今更ながら、良くあれをスルーしたな、私。
そりゃあ、ディーノさんだってため息を吐くよ。あれは私が悪いね?!

「静玖、連絡終わっ………どうした?」
「う、」
「うん?」

くまちゃんパジャマを畳んで紙袋に仕舞っているまでは良かったのだけれど、ディーノさんの発言を思い出して顔を真っ赤にした私を見下ろしている彼から視線を反らす。
連絡ありがとうございました、が言えない。だって恥ずかしい。
私、今更だけどこの人に何をさせた………?
なんか首筋まで熱くなってきた。
ぎゅっと目を瞑って熱が下がるのを待っていると、するっと頬を撫でられた。

「どうした?」
「う、あの、ですね?」
「うん?」
「今更ながらディーノさんの発言の破壊力にやられてます………」
「ん、今日は『帰らせない』ぞ」

それー!!!
ソファーに座っている私の前にしゃがんだディーノさんが、私の手を取ってそう言う。
優しい微笑みを浮かべているディーノさんの攻撃力と言ったら………………言ったら。
頬と首筋の熱が落ちることなくさらに熱が上がるだけだった。
本ッ当に、手加減をしてほしい………………!!!!







☆ ☆ ☆ ☆







まぁ、こうなるよなぁ、とわしわしと髪をタオルで拭きながらベッドを見る。
すよすよと眠っている静玖の姿を見て、にんまりと思わず笑ってしまった。
帰す気はなかった。だが、着替えがないと言われても困る。だからすべて用意しておいた。
すべて、―――全てを、だ。
下着の入った紙袋を渡した時、驚いただけで終わったことにはこっちが驚いたんだがな。危機感が足りないのはどうしたものか。いや、相手はオレだから良いが。とりあえず明日か明後日、一言言っておこう。
夕飯はルームサービスを取り、部屋でのんびりと二人で食べた。まぁ、ロマーリオも近くにいたけどな。
入れ墨の関係上オレは大浴場にはいけないし、護衛の関係上静玖一人を大浴場に送り出すことも出来ないので、順番に部屋の風呂に入った。
いやー、パジャマはな、あの3着から選ばなきゃならないものなぁ。ホテルのアメニティ? いや、知らないな。知らないとも。頼む必要もないし。
思わずニヤける。
絶対にくまが描かれたのは嫌がるだろう。ベビードールだって絶対に嫌がるのは………恥ずかしがるのは目に見えていた。思ったより悪い反応ではなかったけれど。
まぁ、そんなわけだから、選択肢はないよな?
今一度静玖を見る。淡い水色のネグリジェに身を包んだ静玖を。掛け布団の上に寝てしまっているのがまた可愛い。

「ボス、見過ぎだぞ」
「良いだろ? 誰にも文句は言われないはずだぜ?」

だってオレのだぞ。誰にも文句を言わせない。彼女は、オレの手を取ったのだから。
ベッドに近付いて、そっと彼女の頬を撫でる。すべすべの肌を堪能しようとしていると、ボス、とまた窘められた。

「お嬢ちゃんはまだ十代の子供だぞ? ボスの欲をぶつけるには若すぎる」
「だからちゃんと手加減してるだろ」
「彼女がもっと『手加減』を望んでるのに?」
「これ以上? これ以上は無理だろう」

もぞ、と寝返りを打とうとする静玖の身体を抱きかかえる。
本人はあまり自覚していないが、現状、彼女の体調はまだ万全とは言い難い―――まぁ、これはツナが言っていたことだが―――らしいので、ちゃんとベッドで寝かせないと。

「んん……………」
「寝てて良いぞ、静玖」
「んー………」

もぞり、身体を動かして、すいとオレの首に腕を回した。きゅ、と首に抱き着いて、その柔らかい身体を預けてくる。

「静玖?」
「あの、ね、ディーノさん………」
「ん? どうした?」
「あしたも、あさっても、おやすみだから………、おやすみだから、そばにいますからね」
「………………………」
「わたし……なんかで、よければ」

すり、と頬を擦り寄せて、それからあれ、なんて呟く。
ゆっくりと身体を離してタオルに手を伸ばし、まだ湿っているオレの髪にタオルを当てた。

「ちゃんと乾かさないと、かぜひいちゃいますよ」
「あぁ」
「……ディーノさん………………?」

眠たそうに瞬きをする静玖を抱きしめる。少しだけ楽しそうな声を漏らした静玖が、躊躇うことなくオレの背に腕を回した。
無意識の行動の可愛いこと。
思わず旋毛に口付けると、ロマーリオが小さな声でボス! と、オレを叱ったが無視だ。

「んぅ、」
「乾かしたら寝るさ。さ、先にお休み」
「んん、おやすみなさい………………」

ベッドに降ろして、布団を掛けてやれば、ふにゃふにゃとした声で、とても嬉しそうに蕩けた瞳で笑ってからまた眠りに付く。
………………あぁ、もう、この子は!

「明日、明後日と言わずに、ずっと傍にいてくれてよ」

前髪を少しだけ払って、普段あらわになることのない額に唇を触れさせた。
また起こすことのないよう静かに離れて、思わず深いため息を吐く。

「早く嫁に来てくれ…………」

そうすれば、臆することなく手が出せるのに。

「まずはプロポスタが先だろ、ボス」
「だってまだ、日本ではそういう年じゃないだろ?」
「わかってるなら自重してくれ」
「んー………、まぁ、九代目に提案してみるか」
「提案?」
「静玖を養子にして、うちに嫁入りさせませんかって」
「いやそれ、絶対に怒られるぞ……………………ヴァリアー辺りに」
「だよなぁ!」

怒られるだけならまだしも、カッ消されたら困る。だから打診できないでいるんだが。

「で。どうするんだ、ボス」
「髪を乾かして、少し仕事したら寝るさ。………………活力はここに在るから仕事も捗りそうだしな」

眠っている静玖の頭を撫でてから、ベッドから離れる。納期は先だが、予めやっておけば後々楽だから、少しだけでも仕事を進めておこう。
そうして、彼女の隣で眠るのだ。
ドライヤーを用意するロマーリオの背中を見ながら一度伸びをした。

翌朝、オレの腕の中で起きた静玖は、騒ぐことなく顔を真っ赤にしたままそこに収まっていてくれたことに感激したオレが、彼女をきつく抱きしめるのは言うまでもなかった。













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本編ではごめんね、ディーノさん! 貴方の見せ場はもう少し後(予定)です、ごめんなさい。な、気持ちを込めて書きました。








おまけ

「静玖、結局カーディガンの件は解決したのか?」
「あぁ………………、やっぱり濁しても無駄でしたね」
「いや、恭弥に聞いた」
「あ、やっぱり聞いたんですか、そうですか。あれです、解決しました、解決をやらせてしまいました? 別に私は気にしてなかったんですけど、」
「恭弥からしたら『風紀を乱した』判定と」
「まぁ、雲雀先輩にカーディガンが見つかった時点でお察し、と言うか」
「あぁ………」
「なんか申し訳なくなっちゃいましたよね」
「まぁ、悪いことをしたのはアッチだからな。お前が気にすることでもないさ」
「そうなんですけど、でもだって、とってもくだらなくって」
「くだらない? あぁ、そういえばカーディガン切られた理由は聞いてなかったな」
「(そこまでバレてる………)あー、隼人君や山本君と仲が良いから、ですね」
「え」
「日本のいじめなんてそんなもんですよ。ね、くだらないでしょう?」
「まぁ、くだらないな。………………だって、お前が本当に『仲良し』なのはオレだもんな?」
「ん、んん、はい………………」

後日、根掘り葉掘り聞かれて、結局赤面させられて終わった話。



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