有名人と一般人

モデルさんと一般人的関わり




「跳ね馬って格好良いわね」
「っ、」
「………何吹いてるのよ」

花ちゃんは一般的普通の、ごく当たり前の感想を言っただけなのに、思わずものを吹いてしまった。
げふごふ、と幾度か咳き込んで、それから深呼吸をして平常心を取り戻す。
跳ね馬───ディーノさん、ねぇ。
確かに今、一番売れに売れているモデルさんだ。
イタリアーノの魅力を全面に出した初めての写真は、幼なじみである綱吉のパパ───家光のおじ様が撮ったもの。
そんな仲から発展したのか、沢田家に遊びに来るようになった。
そんなとこから知り合いになったんだけど、やっぱりカメラ越しのそれと、立体の人物は別物なわけで。

(ディーノさん、格好良いけど、残念なところがあるからなぁ)

思わず心の中でぼやく。
花ちゃんにアンタはどう思うのよ、と聞かれ、曖昧に良いんじゃないかな、と答えて置いた。
そうして帰宅したら、

「よっ。お帰り」
「………………ディーノ、さん?」
「今日、一人ぼっちなんだろー? 遊びに来たぜ」
「え、いえ、あれ、」

何でディーノさんが、私が今日、一人なの知ってるの………?!
内情としては、両親が海外出張で、姉は修学旅行。
え、でもなんで、え、え………?!

「あー、家光に聞いた」
「家光のおじ様、個人情報漏洩っ………! ってだからってなんで来ちゃうんですか、ディーノさんっ」
「なんだよ。邪魔だったか?」
「いや、邪魔って言うか、」

邪魔ではない。邪魔ではないけれど………!
思わず学校鞄を持ったまま立ち尽くす。
あぁ、もう。この人自分が『有名人』であること、自覚あるのかな………!

「もう、何かあったらどうするんですか。って言うか、ウチの鍵、」
「あ、それはツナ」
「綱吉まで………!」

沢田家が私の敵に回るなんて珍しいな、ああもう………!

「だ、だからってこんな不法侵入………」
「だってこうでもしなきゃ、会ってくれないだろ?」
「え、あ、それは」

だって、会う理由がないし。
なんていう言葉は飲み込んで、ぽりぽりと頭を掻いた。

「だからオレから会いに来るしかないだろー?」
「はぁ、」
「ほら、おいで」

なんで。
思わず首を横に振る。なんで両手を広げてるディーノさんに私が近寄らなきゃいけないの。

「ほら、それだ!」
「え、え?」
「そーやって飛びついてこないだろー?」
「それは当たり前じゃ………」
「だ、か、ら」

かたん、とディーノさんが椅子から立ち上がる。
そうして腕を引かれ、すっぽりと彼の腕の中に収まった。

「オレから抱き付くよ」
「ディーノさっ、」
「撮影で疲れたんだよ。癒してくれよ」

ぎゅう、と腰に腕が回って抱き付かれる。
癒してくれ、って。

「………これで癒されるんですか?」
「癒されるよ」
「………………じゃあ、」

そっとディーノさんの背に腕を回す。
さらに力を込めて抱き締めてきたディーノさんに苦笑しつつ、これは花ちゃんには言えないなぁ、と小さくため息を吐いた。




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