主従の関係

お嬢様と執事的なパラレル




「お早う御座います、お嬢様」

毎朝、わずかに笑いながら私に朝を告げてくれるのは、つい最近ティモが私のために雇った執事さん。
本当は彼が誰に仕えたいのか、私は知っているのだ。

「お早う、獄寺君」

名を呼べば、彼は畏まって頭を下げる。
その様子を見て、思わず苦笑。

「あの、獄寺君。ちょっと、話が」
「それはご朝食の後で、で宜しいですか?」
「よ、ヨロシイデス」

獄寺君のちょっと不良的な目に勝てるはずがない私は、引き気味に獄寺君の言葉にこくりと頷いた。
性別が違うから着替えなどの手伝いをしてもらうはずもないから、自分で着替えて、獄寺君が用意した朝食の席へと足を向ける。
朝は和食派なんだけど、獄寺君は洋食派らしくて、結構な頻度で洋食なんだよね。
さて、今日は。

「わぁ、和食!」
「お嬢様、お好きでしょう?」
「うん、好きっ」

問われたので即座に返せば、獄寺君はぱっと私から視線を外した。
………? まぁ、いっか。
焼けたお魚の匂いにうきうきしつつ朝食を初め、美味しさに舌鼓を打ってそれを終わらせた。
………よし、今日こそ言うぞっ!

「あの、獄寺君っ」
「はい、何でしょう」
「獄寺君が本当に仕えたいのって、綱吉だよね?」
「!」
「その、ごめんね。敬語とかだって、うん、ごめん」
「………別に、お前の所為じゃねぇだろ」

敬語を止めてぼやいた獄寺君に、きゅう、と眉を寄せる。
やっぱり無理させてたんだなぁ。
獄寺君とは、実は昔からの知り合いだ。
私と姉、姉の執事になった山本君と、綱吉と今現在綱吉に仕えているバジル君、この6人は所謂幼なじみ。
そんな中、獄寺君は改めて、正式な形でティモに雇われたんだよね。
そんな彼が綱吉に傾倒してたのは知ってる。だから、今回のお話を聞いた時は本当にビックリした。

「別にお前が悪いわけじゃねぇし、」
「うん?」
「お前に仕えてんのも悪かねぇよ」
「………………、」
「それに、お前、今回の話を俺が断ったら、」
「………断ったら?」
「ベルフェゴールになってたんだ」
「?!」

ベルフェゴールって言ったら、ザンザスさんに付き従う人じゃない!
どこかの国の王子様らしいけど、実体が良くわからない人だ。

「よ、良かった。獄寺君が引き受けてくれて良かったよぉ………!」
「だろ?」
「うん、うんっ」
「わかったら───」

獄寺君が椅子に座る私の横に来て片膝を付く。
思わず目を見開いて固まると、そっと獄寺君が私の手を取った。

「だからお前は黙って俺にかしづかれてろ」
「なん………?!」
「なぁ、『お嬢様』………?」

手の甲にキス。
そうしてから顔を上げてにやりと笑った。
かっ、確信犯め………!
顔を真っ赤に染めれば、幼なじみ兼執事さんは、意地悪そうに笑っていた。




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