※ 気合いで大人マモ君ご注意!




後継者、とアルコバレーノだけが呼ぶそれで呼ばれて振り返る。
ぷかり、浮いていたのはマモ君だ。

「マモ君、どうしたの?」

聞けば、マモ君は小さな手を伸ばしてきたと思ったら、その手はぶれるように大きくなって、そのままきゅっ、と手を繋がれた。
え、と目を見開く。
ばさりと重たいコートを翻し、マモ君はその口をわずかに緩ませた。

「マ、モ君?」
「じゃ、行こうか」
「いこ、え、行こう? どこへ?」
「内緒」

手を引かれて歩く。
………マモ君、実は身長高いんだ。
前を歩くマモ君の頭は、私より高い位置にある。
知らない事実───本来なら知り得ない事実に細く笑んだ。

「マモ君、マモ君」
「なんだい」
「隣、歩いても良い?」
「───うん」

とん、と靴底で地を蹴ってマモ君の隣に並んだ。
するとマモ君は足を止めて私を見て来る。
な、なんだろう。

「無料コースと、有料コース、どっちが良い?」
「無料で!」
「その心は」
「有料だと私のお財布がすっからかんになるから」
「うん、さすが後継者」

そう言って、頭を撫でてきた。
守銭奴のマモ君が払ってくれるとは思わないからつい言っちゃったけど、マモ君、怒ってない?

「さ、行くよ」

フードの下、うっすらと笑ったマモ君につれられて歩き出す。
時刻はすでに5時を回り、夕暮れ時だった。
つれられて行った場所はほんの少しの小高い山。
おいで、とマモ君にそっと肩を抱かれ、ほら、と空を指さされる。
赤く鮮やかに染まる空は、夕暮れ。
優しい優しい色を宿した、美しい大空。

「きれい………」
「うん。だから君を連れて来たんだよ」
「マモ君、」
「有料コースだと味わえないものだから、無料コース特別」

さらりと頭を撫でられる。
きらきら輝く空はこれから藍に変わっていくけれど、今はまだ、『大空』を思わせる橙のまま。

「自分の住む町なのに、こんな綺麗な空知らなかった」
「勿体無いね」
「うん、勿体無かった。───連れてきてくれてありがとう、マモ君」
「うん」

ふんわりと笑ったマモ君に、私も笑みを返した。




今日はと夕暮れを共に



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