風紀委員ver

俺は2年B組の風紀委員。去年じゃんけんに負けてからなので、風紀委員は2年目になる。いや、中学は3年しかないので、誰もが長くても3年間しか出来ないのだが。
そんな俺の楽しみは、名前も知らない美しい先輩が応接室にやって来ることだった。
会議と称されたそれには風紀委員が揃うわけだが、そんな中に、たまに美しい先輩が混ざるのだ。それを見るのが楽しみだったわけだが、今回は違った。
会議に雲雀委員長が遅れることはままあることで、きっとどこかで誰かを咬み殺しているんだろう、と言うのが暗黙の了解であったわけ。そんな中、今回訪れた少女は先輩ではなかった。
頭に黄色いアレを乗っけて、雲雀先輩は居ますか? と、臆することなく応接室に入っていた少女は、風紀委員の一斉の視線を受け、ぱちっと目を瞬かせた。
あれ、居ない。
確かに少女はそう呟き、それからどうしようかな、と少し眉を寄せて思案した少女に、後ろから声が掛かる。
振り向いた少女とともに後ろを見れば、草壁副委員長がいた。

「珍しいな。どうかしたのか?」
「頭見て下さい、草壁先輩」

さっきよりもよっぽど困った声を溢した少女に、草壁副委員長が苦笑する。
頭の上の黄色いそれは、全く動かない。

「なんか、寝ちゃったみたいで」
「───何してるの」

どうしましょう、と返した声に、草壁副委員長ではないものが被る。
あ、雲雀委員長だ。
誰もがぴりっとした空気に背筋を伸ばす。
もしかしたらあの少女は俺達の目の前で咬み殺されるかもしれない。
それは避けてあげたいが、俺が雲雀委員長に叶うはずもない。
可哀想な犠牲だ、と心の中で合掌すると、わりと明るめの声が響いた。

「雲雀先輩」

と。
会えて嬉しいと言わんばかりの弾んだ声に、誰もが肝を冷やす。
ここで雲雀委員長の機嫌を損ねたりしたら───。

「やぁ、いらっしゃい。君がここに足を運ぶなんて珍しいね」

………あれ?
雲雀委員長、機嫌良い?

「え、えぇ? そうですか?」
「うん」
「あー、そうかもしれませんね」
「で、何の用?」
「ヒバードです。寝ちゃったみ───っ!」
「あぁ、本当だ」

頬を両手で包み、それからぐっと少女の身体を引いた。
そして黒髪を寝床にしているらしい黄色い物体を見る。
うわ、なにあれっ。近い近い近い!!
まじまじと黄色いのを見た雲雀委員長はついとそれを摘まんでぽいと宙に放った。
ぱちっと目を開けたそれはぱたぱたと軽やかにその羽根をはためかせ、旋回する。

「じゃあ確かにヒバードをお届けしたので私はこれで」
「そう。………群れないでよ」
「はい」

最後の1つ、にこっと笑って応接室を出ていった。
なにあれ、アイツ凄い………!

そんな彼女が、次の日、隣のクラスから出てきたのを見て、俺が声を上げそうになったのは仕方がないことだった。



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