四角世界

きらっきらと輝く瞳を俺に向ける。
あぁほんと何でこんな目を俺に向けるんだ。
今まで一度だって向けたことなかったクセにッ!!

「ご、獄寺君って頭良いんだね!!」

べっ、別にお前にそんなこと言われたって嬉しくねぇよ!
だから、だからそんな目で俺を見るなっ。

「ははっ、本当に獄寺って頭良いよなー」

当たり前だろ、野球馬鹿。俺はお前と違ってちゃんと勉強してんだ。
それに、授業なんか聞かなくても出来るもんだぞ、この問題は!

「だからいっつも頼っちゃうんだ。ごめんね、獄寺君」

いいえ、十代目っ。
貴方の力になれるのなら、この獄寺隼人、なんでもやらせて頂きます。

「そうなんだ。じゃあいつも大変だね、獄寺君。しかも今日は私まで面倒見てもらっちゃって………」
「………別に。お前は野球馬鹿と違って補習授業を受けてるわけじゃねぇんだろ? だったらさほど負担じゃねぇよ」
「ごめん、獄寺君。俺、補習受けてるよ」
「いいえ、十代目っ。貴方に勉強を教えきれないセンコーが悪いんです。貴方は悪くない!!」

思わず力説すれば、俺の眼前にいる柚木がくすくすと笑い出した。
な、なんだ………?

「獄寺君って本当に綱吉の事好きなんだねぇ」
「なっ────」
「ちょっと嬉しいな」

ぽと、と手からシャーペンが落ちた。
それは俺の左右にいた十代目も野球馬鹿も同じだったようで、きょと、と目を丸くして柚木を見ている。
柚木は3人の視線を受けてようやく「ん?」と首を傾げた。

「な、なんで静玖が嬉しいの?」
「幼なじみが好かれて嬉しくないことないよ?」
「そりゃあ、そうかもしれねぇけど」
「だから嬉しいんだ。それだけ」

にこにこと笑うだけ笑った柚木ははい、と俺にノートを差し出してきた。

「採点宜しく」
「あ、あぁ」

柚木のことが、いまいちよくわからない。
だけど、それでも良いと思える時もある。
今のこの距離感が、心地いいと思える。
───って、何考えてんだ、俺は!!
誤魔化すように赤インクのボールペンを握り締めて柚木のノートの採点を始めた。




☆ ☆ ☆ ☆




じゅー、とストローでオレンジジュースを吸って、左手にいる静玖を見る。
獄寺の赤が入ったノートをじいっと見て、それから新しいページを捲って再び問題に取り組んだ。
あー、俺も勉強しなくっちゃなあ。

「なぁ、静玖」
「なに、山本君」
「俺にも勉強の仕方教えてくれよ」
「とりあえずやるのみ。始めなきゃ話にならないからね」

それはそうだけれども。
上唇の上にシャーペンを乗せて口を尖らせる。
でもよォ、やる気起きないんだよなー。

「後はあれだよね。山本君の場合は餌を前に釣らすとか」
「?」
「今回のテストで平均以上だったらあれ買おうとか、自分にご褒美をもたらすようにしてみるとか」
「んー」

シャーペンを握りしめて静玖を見る。
静玖は首を傾げて俺を見直した。

「じゃあ俺が全教科80以上取ったら、静玖はウチに泊まりに来てくれる?」
「却下」

否定の言葉が飛んだのは俺の目の前から───ツナからだった。




☆ ☆ ☆ ☆




俺の目の前にいる山本から聞き捨てならない言葉が聞こえたから思わず却下しちゃったけど………。
ちらっと静玖を見れば、笑ってはいるけれどさっきと笑みが違う。
う、うん?

「なんで私が山本君の家に泊まりに行かなきゃいけないのさ。意味わかんない。だったら獄寺君の家行くし」
「は?! なん、なんでウチなんだよっ!」
「えー、だって山本君の家より獄寺君の家の方が魅力的じゃない?」
「あぁ、それは確かに」
「十代目?!」

素っ頓狂な声を上げた獄寺君に笑みを返して、机の下から静玖に手を伸ばした。
それに気付いただろう静玖がさっと左手を下に降ろす。
休憩をしているように見せて、静玖と手を繋ぐ。
珍しく慌てる獄寺君と文句を言う山本を後目に、俺と静玖は視線を合わせてくすりと笑った。




☆ ☆ ☆☆




本当に、くすぐったい。
それは綱吉と手を繋いでいるからではなくて、こうやって、みんなで勉強会をしているから。

「えへへ」
「静玖?」
「たまには騒がしいのもいいものだね、綱吉」
「そういうのは、『賑やかなのも』って言うんだよ、静玖」
「それは失敬」

確かにそうだ、と私はまた声を上げて笑うのだった。












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『並盛三人組とヒロインでお勉強会、とかおいしいですよね!(笑)』・『綱吉、山本、獄寺でほのぼの』・『主人公三人組:日常生活』
今回まとめさせて頂きました。
三人そろって会話するって本編でもまだやったことがなかったので新鮮で楽しかったです。
また、視点をくるくる変えてみるという荒技をやってみましたが………もうやらないと思います。
アンケ投票、ありがとうございました!



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