104

仲間達の幻覚に、首を絞められる。
苦しい、苦しい。………だから、悲しくて悔しい。
そしてそれは俺だけじゃない。だって、幻覚のランボもイーピンも、クロームも泣いていた。
だから、アイツを倒さなければ、死んでも死にきれねえ。
ぽわり、また炎の髑髏(しゃれこうべ)が浮かび上がる。
───あぁ、今度は静玖か。
そのまま浮き出た人影に、視界が滲む。
嫌だよ、嫌だ。
幻覚だろうとなんだろうと、アイツにまでこんな事をされるのは、堪えられない。
堪えられないんだよ、静玖。
そう思って、偽りの静玖を見る。
すると静玖はその瞳を揺らして俺を見た。

「静玖………」

俺を見て戸惑いに揺れる瞳。
それが『嘘』には見えなくて、また小さく静玖の名を呼んだ。
すると、

「なにっ………?!」
「静玖………?」

ふわり、と静玖の身体が浮く。
それは、静玖を持つ『誰か』がいたからだ。
藍色の炎の中でも一際目立つ白の炎、そして白の髪。
意志を携えた瞳も僅かに銀色を混ぜた白で、全体的に『白』をイメージさせる人だ。

「フィー………?」

立体映像であるリボーンが、あのリボーンが珍しく目を見開いてその『白』を見た。
リボーンの、知り合い………?
ぱちりと目を瞬かせると、藍色の炎が揺れて、氷を作り、変わっていく。
そうして静玖と白い人を包み込んだ氷は、そのままパキン、と高い音を立てて割れた。
そうして静玖と白い人は居なくなった。
………少し、助かった、かな。
でも、

(何、あの男)

超直感が告げる。あれは男だと。
───ズルい。
ズルい。ズルいズルいズルい。
静玖の傍に居て、静玖を助けられて、静玖に触れられて。
ちっと思わず舌打ちを一つして、とりあえず静玖に事実を聞く前にあの幻騎士をぼっこぼこに打ちのめしてやろう、と、気付かれないよう、死ぬ気の零地点突破を展開した。












綱吉君と幻騎士の戦いは、見ていて気分の良いものじゃなかった。

「全員収容完了しました」
「あぁ、ありがとう」
「こちらを」

潜入してきたボンゴレファミリーを捕らえておくことにした僕は、チェルベッロから渡されたボンゴレリングを確かに受け取った。
───僕達が決めた結末(ゴール)まで、後少し。
少しだけ緊張で胃が痛くなってくる。
本当にこれが白蘭さんにばれてないよな、とか、綱吉君がちゃんと幻騎士に勝てるか、とか。
………静玖ちゃんを抱えたさっきの男の人は誰だ、とか。
フリル過多の服装だったけれど、あれは間違いなく男の人だった。
静玖ちゃんの表情から見て、すっごい懐いてるみたいだけど、あんな存在、静玖ちゃん本人から聞いたことがない。
そりゃ、僕はあまり静玖ちゃんと一緒に遊んだりはしなかったけど、でも知り合いだし、友達だ。
だから、その、彼氏が居たならきっと報告してくれる筈だし。………うん。
でもそんな報告聞いてないし………あれ、綱吉君と幼なじみであることもついこの間知ったばかりだよ?! ってことは、あれ、静玖ちゃんの………?!
いやいや、まさかっ! そんなはずは…………!
チェルベッロの存在を無視して頭を抱える。
そんな、このタイミングで失恋なんて………!!
じわり、と涙が浮かぶ。
あぁ、失恋に傷付いてる場合じゃないのに。
そう思ってから、はた、と我に返る。
おかしいな、このメローネ基地内で、静玖ちゃんや雲雀君、綱吉君達の姿をカメラで捉えることが出来たけれど、静玖ちゃんを抱えた彼を捉えることは出来なかったな………。
じゃあ彼は、一体いつからこのメローネ基地に居たんだ?
クローム髑髏の幻覚とは思い難い。何故なら彼女は静玖ちゃんより気を失っていたから。
幻覚ではないとしたら、実体? ではなぜ今になって現れたんだ?
───静玖ちゃんが一番危ない時に現れなかったのに。
思い出して苛立ちを感じた。
何が何でも、もう静玖ちゃんは白蘭さんには渡せない。
彼が考えてるトゥリニセッテポリシーに、静玖ちゃんを関わらせたくないっ………!
ユニさんを壊してまで手に入れた白蘭さんだ。
あそこから逃げた静玖ちゃんに執着してるだろう。
だからこそ、もう───!!
爆発音とともに研究室の壁が壊れる。
………来た。
いよいよ結末だ。
そっと眠っている静玖ちゃんの姿を見る。

すべてが終わったら、彼女の口から説明してほしいなんて、僕のこれは高望みだろうか。



- 105 -

[] |main| []
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -