「…いい人に恵まれたんだな」
【夢】を使って見せた過去を見終わって戻ってきた桃矢ゆっくり目を開けてが言った。
『うん、すごく幸せだったし楽しかった!家族とは…結果的にはあぁなっちゃったけど得るものも多かったから全然後悔してない。』
私は心から言える。侑子が私の家族だったから。
そうしているうちに観覧車は終点位置まですぐとなっていて、急いで杖を戻し耳につけ直した。
『いこっ』
観覧車から出るのが少し寂しいような、なんとも言えない気持ちを抑えて元気よく外に出た。外は雪が積もって白い絨毯みたいになっている。フカフカだと足あとをつけるように先を歩いていた私の腕を桃矢がつかんだ。
『ぉわっ!どうしたの?』
「どこかいったりしないよな?」
『え?』
「お前の家族みたいに繋がりを消して俺の前からいなくならないよな?」
いつもの桃矢とは違って…少し弱気で悲しそうな表情。
「お前を見てたらいなくなりそうで、なんか不安になった」
『なに言ってるの。居なくならないよ。』
私はクスクスと笑った。桃矢は真剣な表情で私を見つめた。
「好きなんだと思う。お前のこと」
『……え』
「お前のそばにいると和らぐし、そばに居たいって思った。あと守りたいって…さくら以上にな」
桃矢は私をつかんでいた手に力をいれる。
次の瞬間、私は桃矢に包まれるように抱きしめられた。
「だから、付き合わないか」
耳元で囁かれた言葉に目が熱を持った。
『…私、ずっと桃矢に惹かれていた。でもそれは魔力が惹かれているだけかもしれないって…
それにもう私には幸せはこないって…侑子にたくさんの幸せもらって、一生分使いきって、もうないと思ってた』
家族を自ら切った私は幸せには恵まれないと思っていた。だから桃矢が妙気になったのはきっと魔力に惹かれてるんだろうと自己解決していた。
『私も…私も桃矢が必要だよ…』
涙で桃矢がよく見えない。愛しい人が見えないことがもったいなく感じた。
「名前」
桃矢は私の名前を呼んでそっとキスを落とした。それは短いとようで長いような時間だった。
私が落ち着いたあと木之本家に向かった。
『なんか、泣いたあとだから恥ずかしいしぞわぞわする…』
「ぞわぞわってなんだよ」
『わからないよ…初めての感覚だもん』
「初めて?」
『告白?されたのも初めて、抱きしめられたもの初めて、キスされたのも初めて、彼氏になった人の家にいくのも初めて』
「全部俺が初めてとか、嬉しいな。」
そういって桃矢は玄関先であるにも関わらずキスをした。ぼっと顔を赤くする私を笑って扉を開ける。
「ただいまー」
『お邪魔します。』
「名前さん!メリークリスマス」
『メリークリスマスさくらちゃん』
さくらちゃんは急かすように私の手をひいて中に入った。
「メリークリスマス、名前さん。一緒に夕御飯はいかがですか?」
『いいんですか!!』
「はい、是非どうぞ」
藤隆さんのご好意をありがたく受け取りご飯にお邪魔した。
「名前さん!これクリスマスプレゼントです」
さくらちゃんは水色の包装紙の包みをくれる。
『わぁ…ありがとう!!開けていい?』
「もちろんです」
包みを開けるとかわいいはねのついたポーチだ。
『かわいい…大丈夫にするね』
ポーチをきゅっと抱きしめた。
今日大切なものが2つもできちゃった。