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次の日、千隼くんと時間を会わせて駅で待合せをした。
待ち合わせ場所にはすでに千隼くんがいた。
『千隼くん!おはよう!ごめん待たせたかな?』
「おはよう。さっき来たばかり。ちょうどよかった。」
『ならよかった。』
千隼くんの答えにホッと胸をおとす。
『あっ!あのね!千隼くんに渡したいものあるの!』
私はそう言うと持っていた手さげバックからあるものを取り出した。
『ちょっと遅くなったけど、バレンタインデーのチョコ。当日はマラソン合ったし…それどころじゃないかなって持っていかなかったから。』
「……」
『甘さ控えめにしたんだけど…いらなかった、かな?』
「いや、もらえると思ってなかったから、驚いてる。ありがとう。」
『よかった〜。一瞬不安になっちゃった!』
「その手さげ、全部チョコ?」
『え?うん。久実やカンナとかへの友チョコと、あと、竜生くんに感謝チョコ!』
そう言うとむすっとした表情を作った千隼くん。
「なんで竜生?」
『日頃の感謝を込めて!いろいろ相談のって貰ったし…その…千隼くん関係で?』
「……。次から相談事は俺にして。俺関係でも。」
『善処します。』
そう答えると千隼くんは微妙な表情をしたが、まぁ、納得してくれたからいいか。
他愛もない話をしながら私たちは並んで学校へ向かって歩いた。
「ねぇ、見た?和泉くんのケータイ」
「あきらかに女子セレクトのかわいいイヤホンジャック」
「兎塚さんのケータイに色ちがいのイヤホンジャック付いてたらしいよ!」
「え?熊倉さんとデートしたんじゃなかったっけ?」
「今日カップルみたいに一緒に登校してたよ!」
女子の噂は凄い。色々すぐに広まる。
おかげさまで今カンナに凄い見つめられている。
「どういうこと?聞いてないわよ?」
『言います。報告します。』
カンナと久実、さるるんと孤坂さんに昨日あったことを順番に説明し、報告した。
『と、いうことで、付き合うことになりました。』
「真希ちゃん!おめでとう!」
「兎塚嬢良かったですな!」
久実、さるるんはうれしそうに喜んでくれて孤坂さんには「リア充め!」と言われた。
『か、カンナ?』
「…良かった。おめでとう。頑張ったね。」
ぎゅっと抱きついてきたカンナに思わず涙が出そうになった。
『カンナ、ありがとう。』
「もし、千隼に何かされたら言いなさいよ?私が一肌ぬぐから!」
『う、うん…』
それから、みんなに遅くなったバレンタインデーチョコを渡した。
『あとね、露店屋さんでかわいいアニマルビーズが売ってたから、作ってみたの!リボン代わりに今ついてるけどヘアゴムとして使ってもいいし、ブレスレット代わりに使っていけるからよかったら貰って!』
千隼くんにウサギのイヤホンジャックを買って貰ったとき横に色々なアニマルビーズがあり購入しておいた。
久実にはクマ、カンナには犬、さるるんには猿、孤坂さんには狐のビーズに家にあったビーズを繋げ作ったものだ。
みんなには感謝していたから、チョコだけじゃ私が物足りなくて付け加えた。
竜生くんの感謝チョコはカンナに渡してもらうようお願いした。
こんな噂のなかで渡したら噂がヒートアップしてしまいそうだから…
久実はさるるんにマラソン大会棄権者の罰掃除の件でなにか言われてから様子がおかしかった。
放課後、下駄箱で千隼くんと待ち合わせした。今回は私が早くついて、すぐに千隼くんも到着した。
「帰るか?」
『あのね、久実がマラソン大会のときの罰で掃除してて、その手伝いをしたいんだけど…いい?』
「いいよ。どこで?」
『ありがとう!図書室!差し入れなにか買ってからいくから、千隼くん先に行っててくれる?すぐ行くから!』
「わかった。」
私は差し入れに飲みものを買い図書室に行くとなかからケンカのような声がした。
『久実?』
「キューちゃんになんてことするんだよ!」
「豹こそ!!」
中に入ると千隼くんと柿木園豹が掴み合っていた。わけがわからないけど大変だと思い駆け寄ろうとした。
『ちょっとふたりとも!なにしてっ…わぁっ!?』
足もとに散らばったビーズに滑り転んだ私。
「本!踏んでる!」
久実はふたりの足もとに合った本を引っ張った。その拍子にふたりは棚に頭をぶつけた。
「せっかく全部キレイにして、あと少しで終わるところだったのに子供みたいに暴れて!散らかして!棚まで壊して!ふたりともケンカまでして…もうケンカしない!」
久実が怒ったとこ初めてみた。
あっけにとられた私たちは呆然とその姿を眺めた。そのうち我に返った久実が恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「あ!真希ちゃんは大丈夫?」
『あ、うん。ビーズでこけて手を擦りむいただけだよ。』
「久実!手伝いに来ー……全然掃除終わってないじゃない!しかも何、柿木園その格好!そして真希はどうして座り込んでるの!」
『カンナ、ふたりのケンカ止めようとしたらこけて擦りむいた。』
「ちょっと千隼!真希を傷物にしたら返してもらうからね!」
「なんでお前がそれを言う。」
『ママンみたいだね、カンナ』
そのあとは久実が持っていたクマのぬいぐるみが乗った本をみんなでみて笑って他愛もない話をして、図書室片付けた。
進級してもこんな変わらない雰囲気で過ごせますように。