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「真希この中なら何が一番いい?」
『んー、私はこのインディゴカラーのやつが好きだけど、いろいろ使えそうなのはやっぱり黒。女性向きならベージュとかこの優しいオレンジもいい。赤も悪くないかな。』

今日は祖父母の家に来ている。住んでるところからけっこう離れているけどとてもいいところで私はすき
それにここはいろいろな服があり、ファッションの勉強にもなる

「ふむ、意見ありがとう。検討してみる。」
『うん。あ、あのグレーのストール借りていい?』
「試作だ。今日の報酬替りに持ってけ。」
『ありがとう!ちょっと息抜きに散歩してくるね。』
「あぁ、行ってらっしゃい。」
『行ってきます。』

すっかり暗くなった道をニットカーディガンの上からさっきのストールを巻きながらゆっくり歩く

やっぱりこの時期は人、ほとんどいないねこの海

イヤホンをつけてお気に入りの音楽を流し砂浜近くの石に座り膝を抱えてうつむいていた

しばらくして音楽が終わったころ、戻ろうと立ちあがり服についた砂を軽く払った

ゆっくり砂浜を歩きだした
夏とは違う景色と砂の感触が気持ちいい
歩いていると前の方に人が座っていることに気付いた
そして、近づいてわかった

『千隼くん…』
「ま…き?」
『初めて、千隼くんに名前呼ばれた…』
「…名字…知らない」
『前に自己紹介したのに……って唇青いよ!どのくらいここにいたの!これストール、羽織って!』
「わりぃ、ありがと」

私は今まで巻いていたストールを千隼くんに被せた
それでも寒そうで手のひらを千隼くんの頬にぴたっとくっつけた

「!」
『わ、冷たい。風邪ひかないでね?』
「…そんな弱くねーよ」
『どーしてここに?ブッフェじゃなかったっけ?今日』
「色々あってクマ女とここに来てた。」
『久実と?久実はどこにいるの?』
「行かせた。豹のとこ…」
『そっか。』

結局、また送り出しちゃったんだ
本当に千隼くんはいい人でいい男だとおもう

『千隼くん。』

頬にくっつけた手を外し、両手を引っ張り立ち上がらせた

『頑張ったね。だから今日はもう帰ってゆっくり休んでね。』
「……」

きょとんととしている千隼くんに対し、ニコニコと笑ってよくわからないことを言ったのは自覚してる
でもこのまま、千隼くんといたら想いをぶつけてしまいそうだから……
千隼くんの後ろにまわって背中を押した

『ほら、早く歩いて!本当に風邪ひいちゃう!』
「親か」
『本当意地わるいな。』
「どうも」
『誉めてない。そのストールそのまま使って“∞2”の非売品だよ(笑)男の人が使っても変じゃないと思うから。』
「いや、でも…」
『千隼くん』
「ん?」
『また学校で、ね』
「…ありがと。またな、真希」

千隼くんは少し笑い後ろでひらっと手を振り帰っていった

私も手を振り、もう千隼くんが振り返っても見えないだろう頃その場にしゃがみこんだ

『反則だよ。』
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