13
久実が風邪で休んで5日目
やっと今日カンナとお見舞いに行けることになった
誘われた日からずっとタイミングが合わずなかなかこれなかったことと
カンナが1人で行こうもチャイムを押せず帰るということもあったらしい
「なんか、緊張しちゃう」
『久実のお見舞いなのに?』
「だからよ。友達のお見舞いなんて初めてなんだもん。」
『ふふっ、カンナ可愛い』
膨れっ面になったカンナはチャイムを押した
しばらくして、久実が出てきた
「カンナちゃんに真希ちゃん!どうしたの」
「…顔見にきたんだけど元気そうならいの、じゃあ」
『えっ』
「え?もう?せっかく来てくれたのに。よかったら上がってお茶でも」
「帰るからいいわ。久実は病気なんだから寝てなよ。」
『ちょっと、カンナ!』
私が声を張り上げるのと同時に久実がカンナのカバンを掴んだ
掴んだことでカバンの中身が落ちた
いっぱいのお菓子が
「私今まで女の子の友達ってほとんどいなかったの。だから久実が寝込んだって聞いてお見舞いいかなきゃ!ってなっても、家の前まで来ても迷惑かもしれないってチャイムすら押せず帰ってたし、お見舞い品もなにがいいか全然わからなくて…笑っちゃうでしょ」
「知らない間に久実と千隼の写真が張り出されてるし、仲間外れにされちゃったのかなってさみしくて…久実のこと大好きだからやきもちやいちゃった。早く元気になってね。久実がいないと学校がつまらないわ」
『本当だよ。さっきのカンナの態度はとても驚きましたけど、こんなカンナを見れるようになったのも、竜生くんとかと仲良くなれたのも久実のおかげで、私今すごく学校が楽しいの。でも大好きな久実がいないと物足りない。だから早く良くなって、また一緒に学校生活たのしもう?』
久実は勢いよく私たちに抱きついてきた
「ごめんね、ありがとう。カンナちゃんと真希ちゃんは私の一番の女の子の友達だよ。
あのね、ふたりにこれ、もらってくらるかな。」
『クマのぬいぐるみ?』
久実がくれたのは、カンナには赤いリボンを着けた緑色のクマ
わたしには黒いリボンを着けた水色のクマだった
「大切な友達ができたらあげるって約束してたの。ふたりともよかったら願い事してね。」
『だったら、もう…』
カンナに目配せするとクスッと笑った
「叶っちゃってるわね?」
「『大好きな友達』」
3人で笑い合っていたらいきなり現れた竜生くんと千隼くん
竜生くんは私たちが手を握り合っていたからか変な妄想しだすし、カンナは説教しだすし、…久実と千隼くんはなんか微妙な空気だし
千隼くんのお見舞い品のスイーツブッフェ招待券から皆で明日行こうという話になった
『ごめん、明日祖父母の家に用事があって無理かも。』
「えー…じゃあ、もっかいダブルデートってのはどう?」
竜生くん…カンナと会いたいだけなんじゃ…
でも明日用事が入っていてよかった…
まだ千隼くんと久実のふたりをみてずっと笑っていられる自信がないから…
「じゃ、お邪魔しましたー」
『久美、お大事に!』
「またね、久実」
久実は一生懸命手を振ってお見送りしてくれた
この前の園児のお見送りのデジャブを感じるわ…内緒だけど
「日吉竜生!ちょっといい?話があるんだけど。」
「じゃオレら先歩いてる。行こ。」
『あ、うん。』
千隼くんの言葉を合図に私は歩きだした
「…大丈夫か?」
『え?』
「なんか、静かだから」
『私、いつもうるさかった?』
「そういう意味じゃない」
『ふふっ、ごめん。大丈夫だよ、明日のこととか無意識に考えてたみたい』
本当はドキドキしてなに話していいかわからなかっただけなんだけど
「じーさん家に行くてやつ?」
『うん。デザイナーやってて、その手伝いをたまにやってるの。仮モデルとか。』
「あぁ、だからよく用事がっていってるのか。なんていうブランド?」
『んーと“∞2(インフィニティ)”ってわかる?』
「…知ってる。オレもよく買う。」
『本当!!嬉しい!ありがとう!』
好んで買ってくれる人がいるってすごく嬉しい
私のブランドってわけでもないのにオーバーリアクションだったかも
冷静に考えてみると自分の行動が恥ずかしくて、控えめに咳払いをした
チラッと千隼くんをみると笑っていた
『笑わないで。恥ずかしいから。』
「いいんじゃない?可愛いかったよ」
『笑いながら言われると、ムカつきます。』
「今度、“∞2”のオススメ教えて。」
『しっかり営業するね。』
少し、でもちゃんと千隼くんと会話が出来た
もうちょっと頑張れば
きっとつらくなくなる
もうちょっと頑張れば
きっと過去になる
もうちょっと頑張れば
きっと忘れること出来る
だからもうちょっと頑張れ、私