今日は土曜日。
例のごとく、両親はお出かけ中。
1人だけの穏やかな時間が流れる。

特にすることもなかったので、一週間後に控えている期末考査の勉強をすることにした。
普段は勉強なんてしないのだが、今回は流石にしなくてはならない。
なぜなら、中間の点数がヤバかったから、だ。

特に英語。次で頑張らないと赤点確実。
夢を叶えるためにも、こんなところで躓くわけにはいかない。
だから、ちょっとずつでも、私は自分の出来ることをしていきたい。と、私は思います。(あれ、作文?)



「うーん…。」

とは言ってみたものの、今までサボっていた私が、目の前の文字の羅列の意味を理解することなど不可能で。
真っ白なままのノートを見て、本日何度目かの溜め息をつく。

「(何から手をつければいいんだか…。)」

やっぱり他の教科をやろうかな、と思った時、インターホンが鳴った。
どうせ新聞の勧誘か何かだろ、とは思ったが、もし宅配便とかだったら悪いので、一応出てみることにした。


「はーい。どちら様で……。」

言いながらドアを開く。するとそこには、見たくもないアイツの顔。
とっさにドアを閉める。…が、時すでに遅し。ドアの隙間にはアイツの足。


「ははっ。大好きな俺がいきなり目の前に居てビックリしてしまったかい?」
「違うから。むしろその逆だから。てか、なんで大和がこんなところにいんのよ。」
「名前に会いに来たに決まってるだろう?」

あぁもうまったく。コイツはいつもそうだ。
学校でも私の行くところ行くところに現れやがって。
休日くらい休ませてほしいっての!

「はいはい。帰った帰った!私は今お勉強中なの!大嫌いな英語と格闘中なの!忙しいの!!!」

早口でまくし立てた私に、呆然とした大和の顔。
…なんだ、人間らしい表情も出来るんじゃない。
……じゃなくて、

「…何?何か言いたそうな顔しちゃって。文句でもあるわけ?」
「…あぁ、いや。英語、苦手なのかい?」
「…………悪い?」
「俺が教えてあげようか?」
「は?………あー、」

そういえばコイツ、帰国子女だった。
…教えてもらおうかな、
そんな考えが頭をよぎった。が、

「いや、大和と勉強とか、勉強にならない気がする。」
「ははっ、ヒドいなぁ!中間、ヤバかったんだろう?名前が赤点を取ると俺が困るよ。」

だから、しっかり教えるさ。
そう言って笑う大和。
珍しく真面目な事を言う大和に、少し胸が高鳴った。

なんでお前が私の中間の事情を知ってるんだ、とか
なんでお前が困るんだ、とか
聞きたいことはあったが、話が長くなりそうなので止めておこう。

というか、大和の言うことをホントに信じていいのか?
たまに真面目な事を言ったからって、簡単に信じてはいけない。私の経験がそう言ってる。
だが、1人でも勉強にならないのは事実だ。
だから、

「…お願い、します。」

私がそう言うと、またしても呆然とする大和。
恐らく、そのまま追い返されると思っていたのだろう。

「言っとくけど、勉強にならなかったらすぐ追い返すからね!」
「はは、分かった分かった」

ホントに分かってんのかよ、思わず口に出しそうになった言葉を飲み込んで、私は大和を部屋に案内した。



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