成人式*パロディ エース

「もしかしてアリス?ああ、やっぱりアリスじゃないか!久しぶり!高校卒業ぶりじゃないか?こんな所で会うなんて奇遇だなー。はははっ」



「エ…エース…。久しぶりね。」
実話前方にエースがいることには気付いていた。
気付いていたからこそ、関わりたくないから道を変えたのに。
なのに何故会ってしまったんだろう。
私は今から成人式を行う場となる結婚式場に行かなくてはならないのに、こんなところでこの迷子と会ってしまっては一体いつ目的地につけるのはわからない。
ここは軽く挨拶をして別れるにかぎる。



「君も成人式に今から行くんだろ?」


「ええ、じゃあエース。また後で会場で会いましょう。」
にっこりと笑って立ち去ろうとする。


すると がしっ と腕を掴まれた。
嫌な予感がする。


「ここで会ったのも何かの縁だし、せっかくだから一緒に行こうぜ!」


「いやよ、あなたと一緒に行ったら一体いつ式場に着けるかわからないでしょう?私急いでるのよ」


「あははっ。アリスは相変わらずだなー。高校のときと全っ然変わらない。なんだか安心したよ。」


「変わってなくて悪かったわね。そういうあなたも迷子なところ、全っ然変わってないのね。あとその胡散臭そうな笑顔と爽やかなところも」


「いやだなー、誉めてるんだぜ?君はそのままがいい。ずっとそのままでいてくれよ。」


いつもの笑顔。
でも目は笑っていない。
そんなエースを見るのも本当に久しぶりだ。


「っと俺が迷子だってよくわかったな!こっちだと思ったのになかなか着かなくってさー。建物は見えてるのに、なんでだろうな?はははっ」


ため息が出る。

「ってことで、式場まで案内してくれるよな?」


掴まれた手首の力は弱まらないまま。
私はこうして迷子に捕まってしまった。



****


「や…やっと着いた…」


「さっすがアリス!俺一人じゃこんなに早く着かなかったぜ。ありがとうな!」


目的地の建物が目の前にあるにも関わらず、真反対の道に進んでいくのがエースだ。
そんな彼を引っ張ってここまで連れてくるのは一苦労だ。


「エース、あなた高校時代より迷子になってない?」

「えー?そうかなあ。自分じゃよくわかんないぜ!はははっ」


いつものごとく笑顔で答えるこの顔を一発殴ってやりたくなる。



「はあ…もう疲れたし帰りたいわ。」


「なになに?あんなのでもう疲れちゃったの?君って体力ないんだなー。」


「あなたとは違うのよ」


「じゃあ俺が君の体力作り、手伝ってやろうか?」


「…遠慮しておくわ」

エースと体力作りなんて一体何をされるかわからない。
しかもこころなしか距離が近くなっている。


「遠慮なんてしなくていいのに。君は体力をつけられるし、俺は楽しめる。お互いにとっていいと思うけどー。」


「って、あんた何をするつもりよ!絶対体力作りなんかじゃないでしょう」


エースの言う体力作りはやっぱりろくでもなかった。
エースがどんどん距離を詰めてくるから私もあとずさる。



高校のときからこいつはいつもこういう際どいことを言ってきていた。
それでもそれ以上は何もしてこないから、私も何もしなかった。
男女の友達にしてはちょっと距離が近くて、恋人とは呼べない中途半端な関係。
そんなエースとは高校卒業後は全く会わなかった。
だから実を言うとエースに会いたかった気持ちもあった。
それは友達としてなのか、それとも恋愛感情としてなのかは自分にはよくわからない。



「ははは!俺ってそんなに信用ない?心外だなー。」


ついに壁ぎわまで追い詰められてしまった。
「そこどきなさいよ。みんながいる広間に早く行かなきゃ。何のために成人式に来たんだか分からないわ」


「んー。嫌だ」


きっぱりと彼はそう言う。

「君は俺よりも他のやつに会いたいのか?せっかく久しぶりに会ったのに、つれないなあ」


「エース以外にも高校卒業以来会っていないたくさんの人がいるんだもの。あなたにばかりかまっていられないわ」


「ひっどいなあ。俺はこんなに会いたかったのに」


と言うやいなや ちゅっ と軽いキスをされた。
しかも口に。
状況が理解出来ない私は動きが止まってしまう。
今、一体何が起こったのだろう。
高校のときに越えなかった一線を彼は越えようとしているのか。



「ぼーっとしてるね。一回じゃ足りなかった?」


と、今度はほっぺたにキス。


やっと頭が回ってきた。
「!!!い、いきなり何するのよ!」
真っ赤になってそう答える。


「いきなりじゃないよ。本当は高校のときからずっとこうしたかった」


どきっとする。


「でも高校のときは、アリスとユリウスとの三人で楽しかったし、君も身構えてたから別に今の友達のままでもいいかなって思ってた。」

それは先生に振られた影響もあるだろう。

エースにしては珍しい真剣な顔。
赤い瞳は少し熱っぽい。



「こうして離れて、改めて思った。俺は君が好きだよ」


「好きだ。俺と一緒にいてくれないか」



その言葉は私の中にすとんと落ちてきた。

ああ、私はエースのこの言葉を待っていたんだ。

間際らしい態度じゃなく、はっきりと言葉にして欲しかった。
じゃないと安心できないから。


自分から言葉にするには恥ずかしいから きゅっ と気持ちをこめて抱きしめた。

「ははは!君の心臓すっごくどきどきしてる。」


「う、うるさい」


顔を上げると嬉しそうな笑顔の迷子。



目を閉じて、どちらからともなくキスをした。
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