ハートの国のアリスEND後設定
もうエースとここ100時間帯ほど会っていない。彼のことだ。きっとまた何処かで迷っているんだろう。いつものことだ。
頭ではそう理解しているのだがやっぱり寂しい。せっかく恋人同士になったのだから…
といっても自分達は本当に恋人同士なのだろうか。まだ私からは彼に好きだと言ったことがない。好きだと言いたいがなかなか言いだせない。彼はそんな私もうじうじしていて可愛いというが、本当にこのままでいいのだろうか…
***
「ん…」
何だろう。身近に温もりを感じる。
そっと目を開けてみると視界いっぱいに赤いコートが見える。
ああ、エースが帰ってきたんだ。
待ち焦がれた騎士が目の前にいて、嬉しくって抱きついた。
もう離れないように。きつくきつく、ぎゅっと。
そうしてまた目を閉じた。
そんな素直な自分はきっと寝呆けていたんだろう。後々自分の行動を後悔するとは。
「ふ…」
唇に何か温かいものが触れた。
触れて、すぐに離れていった。
「おはよう。アリス」
あんなに待ち焦がれたエースの声が聞こえる。
寝る前にはいなかったから、これは夢なのだろう。
私はまだ目を閉じたまま。
「まだ起きない…か。しかたないなあ。じゃあ奥の手ということで」
不穏な言葉が聞こえてきたような気がした。
「ん、んん!」
何やら熱いものが口の中に入ってきた。
押し返そうとするがあっさりかわされてしまう。
息が出来なくて、苦しくて、目を開けてみるとそこには赤い瞳。
エースが帰ってきたんだわ、と確信。
「相変わらずね、エース。騎士らしい起こし方じゃないじゃない」
本当は会えて嬉しいのに、素直じゃない私の口からはそんな言葉しか出てこない。
「ははは!君も相変わらず手厳しいなあ。最初はちゃんと騎士らしく起したんだぜ。でも君は起きなかった」
「どうやら激しいほうがお好みのようだ」
そっと耳元で低い声で囁く。
「ばっばか言わないで!そんなわけ…」
真っ赤な顔でそんなことを言っても無意味だろう。
「しかも君から抱きついてくるなんて珍しいな。そんなに寂しかった?」
にんまりと、満面の爽やかな笑顔でそう言う。
しかも機嫌も良いようだ。
「は?抱きつくなんて…」
と自分の今の状態に気付く。
「!!!」
そういえば夢うつつの間でうっかり抱きついてしまったのだ。
急いで離れようと身をよじるが彼がそれを許さない。
気付いたら腰に腕が回されてて動けない。
なんてやつ…
さすがエースというか、手が早い。
呆れつつため息をはく。
私はこんなに動揺してるのに、エースはいつも余裕だ。
「…ええ。寂しかったわ。会いたかったのエース」
そんなエースの余裕面を崩してやりたくて、素直にそう言ってみた。
当の彼は少し目を見開かせて驚いてから、すぐに幸せそうな、甘い笑顔になった。
私の心臓は跳ねる。
ドキドキが収まらない。
だってそんな彼の笑顔を見れるのはきっと私だけ。
それがなんだか嬉しくって、思わず私も笑顔になる。
幸せで満たされた時間。
もう寂しくない。
いまならエースに好きだと言えるかもしれない。
と思ったのもつかの間。
「じゃあ相思相愛ってことだな!お互いの気持ちが通じあったということで早速…」
いつの間にかエースは私の上にいて、ネグリジェに手をかける。
「ちょ、ちょっと待って。私三時間帯後に仕事なんだけど…一応聞くけど何するつもり?」
恐る恐るそう聞いてみる。
「やだなあ、何をってナニをだろ!言わせたいのか?君って×××なんだな!ははは!」
頭痛がしてきた。
「もういいからそこどいて。支度しなきゃ。」
彼を押し返してベッドから降りようとすると。
「いっつ!」
どうやら首筋を軽く噛まれたらしい。
「な、何するのよ!」
「んー、君にしるしをつけようと思って。君は俺だけのものだ。俺がいない間に他の誰かのものになったら困るだろう?」
エースは勝手だ。
こいつは私が一人でどんな気持ちで待っているのか知らないのだ。
エースがいつ城に帰ってくるのか分からないから、私はなるべく城にいるようにしている。
友達以上だけど、恋人というにはまたちょっと違う。
微妙な関係。
それでも私は彼のためにこの世界に残ったのだ。
「俺がいない間に陛下やペーターさんと君が浮気しないか心配だぜ」
エースに信じてもらえなくて、私は悲しいのだろうか。
涙が出てきた。
「アリス?」
ちょっと驚いた顔で彼はそう言う。
エースの唇で涙を拭われる。
「あんたは私がどういう気持ちで待ってるかわからないの?いつ帰ってくるか分からない人を一人で待ってるの。」
「うん」
「お城でずっと待ってるの。」
「うん、うん」
「寂しくって悲しいの」
「うん、うん、うん」
「わ…私、は…あなたのことが…」
「うん、うん、うん、うん」
「って聞いてるの?」
「うん!」
「いやあ、俺って愛されてるなあって思ってさ。君にそんな思いさせるくらいなら一緒に旅に連れていけばよかったぜ!」
「え?」
「君があまりにもアウトドア嫌がるから仕方なしに置いていってたけどー…」
それはいつ帰れるか分からないからだ。
「君がそんな可愛いこと言うんだもんな。一緒に連れてっちゃえば誰にもとられないし、いい案だ」
にっこりと笑う。その顔が少し怖い。嫌な予感がする。
「そうと決まったら早速」
と言うやいなやお姫様抱っこをされた。
「壮大な旅にレッツゴーだぜ!」
「いやよ!私三時間帯後に仕事なのに!」
「君は本っ当に真面目だなー。そんなこと役無しに任せとけばいいのに。っと、さあ飛ぶぜ。しっかり捕まっててくれよな!」
私を抱き抱えた彼はどうやらベランダから飛び降りるつもりらしい。
「って、なんでベランダから外に出るのよ!私まだ死にたくないわ!」
そう、ここは三階なのだ。打ち所が悪ければ死んでしまう可能性もあるだろう。
「ははは!だってここから降りたほうが早く外に行けるだろ?それにアウトドアにはスリルがつきものだ。」
その瞬間にもう身体は地面から離れていた。
「ぎゃあああああ」
我ながら可愛らしくない叫び声だ。
「ははは!女の子らしくない叫び声だな!」
そんなのわかってるわよ。
しかしそれどころではない。
必死にエースにしがみつく。
そうこうしているうちに、もう地面に私達は立っていた。
どうやら無事に降りれたらしい。
しかし私はまだエースにお姫様抱っこされたままだ。
「下ろしてよ」
「君はそうすると仕事に行っちゃうだろ?」
「もちろん」
「久しぶりに会った恋人を置いていくのかー。君ってひどいな」
恋人 という言葉に反応した。
「え?私達って恋人なの?」
「何を今さら言ってるんだよ。俺はそのつもりだったけど、違った?」
私はただ単にエースと恋人関係だということを認めたくなかったのかもしれない。
彼が言う愛の囁きはどこか胡散臭い。
それに元の国に帰らなくてはいけなくて、自分の気持ちに蓋をしていた。
しかし今は違う。
エースのためにこの世界に残ったのだ。
「俺は君のことが好きだぜ。ずっとずっと。君を俺の元に縛りつけちゃいたいくらい…な」
ずっとずっと?
ずっとなんてありえるのだろうか。
「君を泣かせていいのも、傷つけていいのも、俺だけだ。俺は君を幸せにもできるし、不幸にもできる。一石二鳥だろ?」
と言うエースの顔からは一瞬いつもの胡散臭い笑顔が剥がれ落ちたような気がした。
そんな彼から目が離せなくなる。
エースをもっと知りたくなる。
やっぱり私はエースのことが好きだ。
だが、まだそう告げる勇気はないから、自分からキスをする。
好き という気持ちをこめて。
その後にアリスが仕事をしたのかアウトドアに連れて行かれたのかはまた次のお話。
もうエースとここ100時間帯ほど会っていない。彼のことだ。きっとまた何処かで迷っているんだろう。いつものことだ。
頭ではそう理解しているのだがやっぱり寂しい。せっかく恋人同士になったのだから…
といっても自分達は本当に恋人同士なのだろうか。まだ私からは彼に好きだと言ったことがない。好きだと言いたいがなかなか言いだせない。彼はそんな私もうじうじしていて可愛いというが、本当にこのままでいいのだろうか…
***
「ん…」
何だろう。身近に温もりを感じる。
そっと目を開けてみると視界いっぱいに赤いコートが見える。
ああ、エースが帰ってきたんだ。
待ち焦がれた騎士が目の前にいて、嬉しくって抱きついた。
もう離れないように。きつくきつく、ぎゅっと。
そうしてまた目を閉じた。
そんな素直な自分はきっと寝呆けていたんだろう。後々自分の行動を後悔するとは。
「ふ…」
唇に何か温かいものが触れた。
触れて、すぐに離れていった。
「おはよう。アリス」
あんなに待ち焦がれたエースの声が聞こえる。
寝る前にはいなかったから、これは夢なのだろう。
私はまだ目を閉じたまま。
「まだ起きない…か。しかたないなあ。じゃあ奥の手ということで」
不穏な言葉が聞こえてきたような気がした。
「ん、んん!」
何やら熱いものが口の中に入ってきた。
押し返そうとするがあっさりかわされてしまう。
息が出来なくて、苦しくて、目を開けてみるとそこには赤い瞳。
エースが帰ってきたんだわ、と確信。
「相変わらずね、エース。騎士らしい起こし方じゃないじゃない」
本当は会えて嬉しいのに、素直じゃない私の口からはそんな言葉しか出てこない。
「ははは!君も相変わらず手厳しいなあ。最初はちゃんと騎士らしく起したんだぜ。でも君は起きなかった」
「どうやら激しいほうがお好みのようだ」
そっと耳元で低い声で囁く。
「ばっばか言わないで!そんなわけ…」
真っ赤な顔でそんなことを言っても無意味だろう。
「しかも君から抱きついてくるなんて珍しいな。そんなに寂しかった?」
にんまりと、満面の爽やかな笑顔でそう言う。
しかも機嫌も良いようだ。
「は?抱きつくなんて…」
と自分の今の状態に気付く。
「!!!」
そういえば夢うつつの間でうっかり抱きついてしまったのだ。
急いで離れようと身をよじるが彼がそれを許さない。
気付いたら腰に腕が回されてて動けない。
なんてやつ…
さすがエースというか、手が早い。
呆れつつため息をはく。
私はこんなに動揺してるのに、エースはいつも余裕だ。
「…ええ。寂しかったわ。会いたかったのエース」
そんなエースの余裕面を崩してやりたくて、素直にそう言ってみた。
当の彼は少し目を見開かせて驚いてから、すぐに幸せそうな、甘い笑顔になった。
私の心臓は跳ねる。
ドキドキが収まらない。
だってそんな彼の笑顔を見れるのはきっと私だけ。
それがなんだか嬉しくって、思わず私も笑顔になる。
幸せで満たされた時間。
もう寂しくない。
いまならエースに好きだと言えるかもしれない。
と思ったのもつかの間。
「じゃあ相思相愛ってことだな!お互いの気持ちが通じあったということで早速…」
いつの間にかエースは私の上にいて、ネグリジェに手をかける。
「ちょ、ちょっと待って。私三時間帯後に仕事なんだけど…一応聞くけど何するつもり?」
恐る恐るそう聞いてみる。
「やだなあ、何をってナニをだろ!言わせたいのか?君って×××なんだな!ははは!」
頭痛がしてきた。
「もういいからそこどいて。支度しなきゃ。」
彼を押し返してベッドから降りようとすると。
「いっつ!」
どうやら首筋を軽く噛まれたらしい。
「な、何するのよ!」
「んー、君にしるしをつけようと思って。君は俺だけのものだ。俺がいない間に他の誰かのものになったら困るだろう?」
エースは勝手だ。
こいつは私が一人でどんな気持ちで待っているのか知らないのだ。
エースがいつ城に帰ってくるのか分からないから、私はなるべく城にいるようにしている。
友達以上だけど、恋人というにはまたちょっと違う。
微妙な関係。
それでも私は彼のためにこの世界に残ったのだ。
「俺がいない間に陛下やペーターさんと君が浮気しないか心配だぜ」
エースに信じてもらえなくて、私は悲しいのだろうか。
涙が出てきた。
「アリス?」
ちょっと驚いた顔で彼はそう言う。
エースの唇で涙を拭われる。
「あんたは私がどういう気持ちで待ってるかわからないの?いつ帰ってくるか分からない人を一人で待ってるの。」
「うん」
「お城でずっと待ってるの。」
「うん、うん」
「寂しくって悲しいの」
「うん、うん、うん」
「わ…私、は…あなたのことが…」
「うん、うん、うん、うん」
「って聞いてるの?」
「うん!」
「いやあ、俺って愛されてるなあって思ってさ。君にそんな思いさせるくらいなら一緒に旅に連れていけばよかったぜ!」
「え?」
「君があまりにもアウトドア嫌がるから仕方なしに置いていってたけどー…」
それはいつ帰れるか分からないからだ。
「君がそんな可愛いこと言うんだもんな。一緒に連れてっちゃえば誰にもとられないし、いい案だ」
にっこりと笑う。その顔が少し怖い。嫌な予感がする。
「そうと決まったら早速」
と言うやいなやお姫様抱っこをされた。
「壮大な旅にレッツゴーだぜ!」
「いやよ!私三時間帯後に仕事なのに!」
「君は本っ当に真面目だなー。そんなこと役無しに任せとけばいいのに。っと、さあ飛ぶぜ。しっかり捕まっててくれよな!」
私を抱き抱えた彼はどうやらベランダから飛び降りるつもりらしい。
「って、なんでベランダから外に出るのよ!私まだ死にたくないわ!」
そう、ここは三階なのだ。打ち所が悪ければ死んでしまう可能性もあるだろう。
「ははは!だってここから降りたほうが早く外に行けるだろ?それにアウトドアにはスリルがつきものだ。」
その瞬間にもう身体は地面から離れていた。
「ぎゃあああああ」
我ながら可愛らしくない叫び声だ。
「ははは!女の子らしくない叫び声だな!」
そんなのわかってるわよ。
しかしそれどころではない。
必死にエースにしがみつく。
そうこうしているうちに、もう地面に私達は立っていた。
どうやら無事に降りれたらしい。
しかし私はまだエースにお姫様抱っこされたままだ。
「下ろしてよ」
「君はそうすると仕事に行っちゃうだろ?」
「もちろん」
「久しぶりに会った恋人を置いていくのかー。君ってひどいな」
恋人 という言葉に反応した。
「え?私達って恋人なの?」
「何を今さら言ってるんだよ。俺はそのつもりだったけど、違った?」
私はただ単にエースと恋人関係だということを認めたくなかったのかもしれない。
彼が言う愛の囁きはどこか胡散臭い。
それに元の国に帰らなくてはいけなくて、自分の気持ちに蓋をしていた。
しかし今は違う。
エースのためにこの世界に残ったのだ。
「俺は君のことが好きだぜ。ずっとずっと。君を俺の元に縛りつけちゃいたいくらい…な」
ずっとずっと?
ずっとなんてありえるのだろうか。
「君を泣かせていいのも、傷つけていいのも、俺だけだ。俺は君を幸せにもできるし、不幸にもできる。一石二鳥だろ?」
と言うエースの顔からは一瞬いつもの胡散臭い笑顔が剥がれ落ちたような気がした。
そんな彼から目が離せなくなる。
エースをもっと知りたくなる。
やっぱり私はエースのことが好きだ。
だが、まだそう告げる勇気はないから、自分からキスをする。
好き という気持ちをこめて。
その後にアリスが仕事をしたのかアウトドアに連れて行かれたのかはまた次のお話。