心操姉1

 
 弟に体育祭のお祝い電話をしたのが一週間前、いろいろ事情があって弟をうちに居候させてほしいと母から連絡があったのは三日前、そして荷物を抱えた弟がやって来たのが今日。

「荷物少なくない?」
「いや、」
「遠慮しとんか」
「…世話になるわけだし」

 気まずそうに髪をくしゃくしゃ揉みながら「うっす…」みたいな反応をする弟に肩パンをかました。この間まで鼻垂らしながら花の蜜吸ってるガキだったのに思春期入ったな〜こいつ〜!確かにうちは1LDKだけどちゃんと人使には一部屋使えるってお母さんに伝えたのに、一丁前に気ぃ使ってやんの。やだね〜久しぶりに会ったからってヨソヨソしい高校生は。

「あんたのおかげで家賃と生活費が支給されるんだケド…。まぁいいや。夕飯どうする?ピザとっちゃう?お寿司も焼肉も行けるんだけど何食べたい?あ、荷解きするから出前がいい?」
「…なんでもいいけど、」
「えぇ〜なんかあるでしょ〜」
「姉ちゃんが食べたい物でいい」
「なんなんお前野菜炒め食わせたろかい」
「…。まぁ…」
「はぁ〜?おねえちゃんだいちゅきだったひとちくんはどこいっちゃったのかなぁ〜〜??またお気に入りのクッキー焼いてあげまちょうね〜」

 やれやれと頭を振りながらダンボールを部屋に運び入れると「姉ちゃんロフトなの?」と怪訝な顔をして聞いてきた。

「俺そっち使うよ」
「いやだりぃて。ご覧ください全ての配置完璧なの。この安っぽさのないロフトが良くてここ住んでるの。めちゃセンス良すぎん?」

 一人で住むには少々…うぅん、わりとだいぶ広い部屋。ロフトの階段ははしごじゃなくてアイアンウッドで大きめの踏み板が壁にめり込んだ感じのデザイン。本当にかわいい。スケルトン階段って名前らしい。はーかわいい。
 ロフト部分の柵もアイアンで、よくあるめちゃせまダサダサロフトじゃなくてちゃんと一部屋空間のある素晴らしい作りだ。もちろんオシャレな分家賃もオシャレ。そんで弟を住まわすだけで「アッアッコンナニイインスカシャスシャス」となる金額を貰えるんだから棚からぼた餅。人使が棚でぼた餅がお金ね。
 空いてる部屋なんて室内干しでしか使ってなかったから全然いい。使え使え。

「必要なものあればちゃんと言いなよ、その分のお金貰ってるし。なんなら先に渡すか?」

 食費分抜いとくけどなガハハ!!と笑って肩を組むと少し照れたように首に手を当ててそっぽを向いてしまった。は?やば、禁断の愛でも始まるんかこれ。あと首に手ェ当てるとか黒歴史になるからやめとけ。

「じゃ、私上で仕事してるから何かあったらラインして。集中するとたぶん声聞こえないから」
「わかった」

 小さく頷く人使。かわい〜、私の弟まじかわい〜。声変わりしてイケボになってるし背も伸びてイケメンになってるけどかわい〜。買い物連れ回して彼女ヅラしたいぐらいイケメンでツレェ〜。


 なんでも弟くんはヒーロー科編入の為に朝夜と先生に稽古をつけてもらえるようになったらしい。それなら雄英まで徒歩20分のここから通わせてもらえって両親からの提案で今回の居候が実現したわけだ。実家遠いからね〜、電車乗り継いで駅から歩くと普通に2時間掛かるからその時間特訓に使いたいよね。わかるわかる。
 ちっさい頃からヒーロー憧れてたもんね。雄英も受かったし、だんだん夢に近づいててすごいなぁ。
 体育祭まじ激アツだったもん。泣いたわ。騎馬戦の乗り方がちょっとイキってて笑ったけどね。DVDに焼いたから結婚式で流したろ。

 


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