乗り損ねた舟


 
 雄英高校 ヒーロー科 不合格
 雄英高校 普通科   合格

 2つの通知書を並べた机に肘をついて項垂れる。いや、わかってたけど。もしかして、とかワンチャン期待しちゃうじゃん。ハァァァア!とため息なのか雄叫びかわからない音が喉から出た。

 やっぱり地方の倍率低い高校にしておけばよかったかと少し後悔が出たが、天下の雄英に憧れていたのでそれは妥協したくなかった。
 滑り止めの普通科に受かっただけでもラッキーだと自分に言い聞かせるけれど本命はヒーロー科。このまま普通の学生生活からの大学に進学〜なんて道には進みたくない。なりたいものはヒーロー、つきたい職業はヒーロー。
 既に出だしが遅れてしまっているがまだ編入という手は残っている。まだ諦める段階ではない。

 入試の実技では圧倒的に個性制御の差が現れてしまった。
 怒られるのが怖くて公園の隅でチマチマ練習してるだけじゃダメだったんだ。いざ本番の戦闘救助となると全く使い勝手が違って、戦況は目まぐるしく変わるしそれに焦ると視界の切り替えも上手くいかず重なる映像に頭が混乱してしまった。

 それに加えて他の受験者が発する爆発音にロボットが集められていたのでうまくポイントも取れず、しかもゼロポロボがピンポイントで自分の場所に来てしまったので逃げるのに精一杯だった。運が悪かったのかなんなのか、何度思い出しても悔やまれる。

「…!!!」

 なんてうじうじしてる場合じゃない!!!時間は有限!時は金なり!私にはやる事しかないんだから過去を引きずってる時間が一番無駄!危なかった!無駄な時間を過ごすところだった!!

「走ってくる!!」

 そうと決まれば、リビングにいる母親に声を掛けて家を飛び出した。
 
 事件や災害のニュースを見るたびに自分の個性だったら…と何度脳内妄想をしてきたことか。それをただの妄想としてら終わらせたくない。絶対かっこいいヒーローになりたい。

 私の凄まじい成長を見ててくれ!…えーと。…お母さん!!!
 




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