家に帰ると、部屋が真っ暗だった



手探りで電気のスイッチを探し、パチッとつける。彼女はソファーに横になってたいた。そっと静かに近づくと、頬に涙のあとが残っていることに気が付いた

まさかとは思い、彼女の腕を見ると、白い肌に浮かぶ赤い線。自傷だ。

またやったのか、とヒソカは思い、彼女のお尻をペちんと叩く

「えっ何?!」

驚いたかのようの飛び起きた彼女は、ヒソカを見ると大きな瞳に涙を浮かべ、呻きながら腰に抱きついてきた

「やっと帰ってきた〜」

泣きながらそう言った彼女、なんだ、ボクの帰りを待っていたのか、とヒソカはそう思う

「腕、出して。消毒しなきゃ」
「う、、、」

なかなか腕を出してくれない彼女。するとヒソカは冗談で「出してくれなきゃ家出するよ?」と言うと彼女は「わ、わかったから家出しないで!」と半泣き

リビングの棚から救急箱を取り出して、彼女の腕に消毒液をかける。すると、彼女が痛そうに顔をしかめた

「今日は何で?どうしたの」

なるべく優しい言葉で彼女にそう言う

「、、、明日が来るのが怖いから」
「誰にでも明日は平等に来るよ?」
「ずっと夜でいい」
「それでも太陽は昇るよ」

彼女が自傷をする理由は、あまり知らない。自分を傷付ける人は自己評価が低いと、どこかでそう聞いた。彼女は普段は明るく、どこにでもいる少女のようなのに、何が彼女を苦しめているのだろうか

ヒソカには分からなかった

彼女の腕に慣れたように包帯を巻くと、彼女が静かにありがとうと言った。ヒソカはそんな彼女の隣に座り、頭をポンポンと触る

「明日が怖いなんて、思い出が作れなくなっちゃうよ」
「思い出?」
「そう、ボクとの思い出」

「ヒソカとの思い出、、、」
「うん。毎日毎日、ボクと君は一緒にいるでしょ。大したことないけど、振り返れば、それは全部思い出になる。楽しかったことも、辛かったことも、全部共有できるんだ。それでも明日が怖いってまだ思う?」

ヒソカがそう言うと、彼女はしばらく考え込んでいた。頭の中で何を思っているのか分からないけど、ボクの言葉が君に届けばいいなとヒソカは心の奥でそう思った

「、、、ヒソカがいるなら、明日が来てもいいかも」
「うん、それでいいんだよ。ボクはずっと君の隣にいるから、どうか明日が怖いだなんて思わないで。素敵なことが起きるのかもしれないのだから」



君がいるからボクがいる。ボクがいるから君がいる。明日が怖いと言って泣き寝入りなんて勿体無い。朝起きれば、君の眠たそうな顔が見れる。それが何よりの幸せなんだ


だからどうか、怖がらないで。



君の笑顔が、ボクにとって1番、守りたいと思うものだから




君と迎える明日(あす)ならば、何も怖くないんだよ





Fin

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