▽切り傷におやすみ
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「ええと…あ、そうだ!
何か傷口を塞ぐ物!」

真夜中に諒が帰宅したかと思ったら、
血の滲み出す腕を静かに眺めている。
冴子ちゃんが傷を負った諒を見たら
すごく心配するだろう。
それ以上に、すぐ連絡を
よこさなかった事を怒るかもしれない。
ここではなく、行くべき所は別にあった筈。

すぐに会いに行けばいいのに。

ここに真っ直ぐ帰ってきたという事は
諒なりに、ちゃんと考えての事なんだろう。
それでも一応は、"呼ぼうか?"と声を
掛けるが、大した事ないからと止められる。
"少しはあいつも休ませておいてあげないと、忍に怒られますから"そう言われて時計に目をやると深夜を悠に回っていた。
そうか、寝ている時間か。

家の中に、どうにかあった包帯を
諒の腕に巻いてやる。
しばらく自分で片手で頑張ってはいたが、
見るに見かねて手を出した。
お世辞にもあまり上手に巻けているとは言い難いが。諒よりかは幾分ましだろう。
その様子をじっと眺めていた諒が、
ぽつりと言葉を発っする。

「亮介くんにも、
心配をかけてしまってすみません。
少しうっかりしていたようデス。」
情けないね、と笑う姿が少し痛々しい。

「いつもだろ?」
「そーでした。」

冗談を混ぜて返したものの、
なんて言おうか、少し考えて
話しをする。本当は返事は求められてはいないんだろうけど。
「うん、うっかりって誰でもあるし。それこそ注意をしていてもうまくいかなかったり、難しい時もあるから」
だから、謝る必要なんて全然ない。
俺は俺で、いつも勝手に心配してるだけ。

「亮介くんってば、少し俺を
甘やかしすぎではないだろうか?」
「お前、甘えるの好きだろ。
それに、大切な人を甘やかしたいって
思うのは、当たり前だろ。」
"出来上がり"とそう言うと、
包帯の巻かれた腕を満足気に見て、
"ありがとう"と、諒がにっこりと微笑む。


今日は眠って、
明日、朝、目が覚めたら、
また、いっぱいいっぱい
誰かに甘えるといい。


「おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」

2001/03/23


 

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