▽蝕
43/43

後ろを振り返ると、
真正面に夕日が見えた。
まるで化け物の様大きくて、
見ていて怖くなった。
オレンジが空の果てまで永遠に続いて、
とても色鮮やかなのに、
無彩色にぼやけて見えた。

背後には自分の影が黒く、
長く長くどこまでも続いていた。
歩いても歩いても付いてくる。

帰らなくちゃ…、
続きを…。

またあの机に向かって。
だから早く。

堤防にはのんびりと座り
談笑する人達や
スポーツを楽しむ人達の姿がある。
視界に映り込むな。
日常の音が雑音に聞こえる。
耳障りだ。
いなくなれ。

ウルサイ、ウルサイ。

一体なにがそんなに楽しくて
笑っているのか、
理解出来ない。

クダラナイ、クダラナイ。

こんな所にいる
周りのクダラナイ人間とは
自分は違う様な気がして、
逃げるように大急ぎで歩く。

家に・・・・・
かえらなくちゃ・・・・・。

つっかけて履いたスニーカーで
一所懸命に歩きだす。

早く・・・・・
早く、かえらなくちゃ。

振り返ると先ほどより
更に大きくなった
影が付いてくる。

怯えるように、
ただ地面をじっと睨み付けながら歩くと、
不意に誰かにぶつかって
現実に戻る。

あっと顔をあげた。
彼女は少し驚いたように眼をみはると、
それからぶつかったおでこを
手でさする。
もう片方の手で
誠の手を引いた彩が、
にっこりと笑った。

「お帰りなさいお兄ちゃん」

2011/01/28

 

▲Chizuninai.Betsuno.Basyo top ▲home 190234 :)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -