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仕事の帰り、妻に電話をした。
いつもと変わらない「お疲れ様」の声と共に伝わってくる言葉は、妻からの気遣いがこもっている。
「今日は外食でもしようか、それとも家で食べる?」
少し時間をかけ、考えをまとめると、落ち着いた声でその選択肢に応えた。
わざわざ出向いてもらう妻に、悪いと思いながらも、家から少し離れた場所、毎日通いつづけたこの駅で待ち合わせをした。
今日のディナーに決めたのは、一人、仕事の合間によく立ち寄っていたファーストフード店だ。
人の波をかき分けながら改札を抜けてやって来た妻に、男は自分の居場所を手を上げて知らせる。もう片手には役目を終えた愛用の鞄と花、待ち時間に柄にもなく自分で買ったクリスマスローズの植木鉢。
深みを増していく夜の景色を前に、時計の針が等間隔で音を刻んでいく。
二人、この町で初めて肩を並べて食べたハンバーガーは、今までと違う味がした。
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お題:真夜中のファーストフード店 が舞台で『植木鉢』が出てくるご飯を食べる話を3ツイート以内で書いてみましょう。
2012/02/29
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