寒い時には…… 


「〜っさみぃ!!」
なんで、こんな冬島の気候真っ只中に外で不寝番なんかしないといけないんだ。なんかとか言ったけど、不寝番は大切だと思うよ。敵船の発見が遅れたってなったら大惨事だからね。でも、わざわざ外でなくともと思う。しかし男性が防寒していない訳では無い。むしろ南の海出身なため人一倍防寒しているのだが、それでも足りないらしい。

グチグチと文句を言っていると、船内へ続く扉が開く音がした為目線をそちらへやる。
「男性!さみぃだろ!ほら!」
「シャチ!!」
そこへ来たのは同じクルーのシャチで、手にはコーヒーだろうか、湯気の出ているマグカップを持っている。シャチは見張り台まで登ってくると男性にマグカップを渡し、隣に腰掛けた。
「うわー、シャチまじ神。寒過ぎて死ぬかと思ってたもん。」
「男性お前寒いのよえーからな。」
本当は酒にしようかと思ってたんだけど、と続く言葉に素直に遠慮する。男性自身アルコールに弱いわけではない、むしろ強い部類に入るが、仕事中に酒を飲む訳にはいかない。シャチもそれを分かっているためコーヒーを持ってきたのだ。
「あ、シャチ。神ついでにもう1枚毛布持ってきてくんない?」
「神ついでって何だよ。まあ良いけど。」
そう言うと、シャチは再び船内へと戻って行った。


シャチが船内へ戻り随分時間が経った。湯気が昇っていたコーヒーも冷めてしまっている。
「シャチ、遅っせーな……コーヒー冷めちゃったし。」
神から降格だ。そう思って冷めたコーヒーを飲み干していると扉が開く音がした。
「シャチ!遅いんだけど!俺凍えちゃ、う……船長ぉ!」
待ち人が来た。そう思い下を覗くと、そこに居たのはキャスケット帽を被ったシャチではなく、モコモコの白い帽子を被った船長のローだった。しかも何故か毛布を腕に抱えている。
「船長!どうしたんですか?」
そう声を掛けると、青いドームが広がり手に持っていたマグカップが消え、代わりにローが腕の中に居た。
「シャチが男性が毛布を欲しがっているって言ってたからな、持って来た。」
「持って来たって……、」
そのままシャチに持ってこさせれば良かったのではないか。と思っていると男性と自身に毛布を被せながらローが眉間に皺を寄せる。
「なんだ、俺じゃ不満だったのか。」
「そんな!不満な訳ないじゃないですか!寧ろ、大満足ですよ!……てか、船長戻らないんですか?」
男性の股の間に座り、抱え込まれる様にして男性ごと毛布に包まるロー。
「人肌があった方が暖まるんだ。」
知らねーのか?さも当然という様に言ってくるローに男性は言う。
「暖かいから何でもいーんすけど、俺不寝番ですよ?」
「知ってる。朝まで二人きりだな。」
「寝ないと、またペンギンに小言言われますよ?」
「勝手に言わせておけばいい。」
ふん、とローは鼻を鳴らすが、きっと男性も無理矢理にでも帰らせなかったと、防寒帽を目深に被った同僚に怒られるのだろうと溜め息を吐く。
「はあ……一緒に怒られましょうね。」
男性はそう言ってローを抱き締める。
「なっ、おい、男性!」
「ロー、俺寒いんだ。」
暖めに来てくれたんでしょ?と赤くなった耳元に囁くと、口篭るロー。くくく、と喉で笑いその暖かさを堪能する。

日が昇り、いつの間にか眠っていたローを起こさないように器用に抱え、次に来たクルーと見張りを交代する。途中、ペンギンと擦れ違うが、ローが寝ていると人差し指を立てれば、小言を言おうとした口は引き結ばれる。欠伸を噛み殺しながら、勝手知ったる船長室へ足を踏み入れ、静かにローをベッドに降ろすと、男性もその横へ入りローを抱き抱える。そのまま目を閉じて夢の中へと旅立って行った。







悠莉様、お待たせしました。
甘々、ということで。甘々でしょうか?これは甘々なのか?と思いながら書いておりました。シャチと絡ませたくって勝手にシャチ出してしまいましたけど良かったですかね?
気に入って頂ければ幸いです。
今回はリクエスト企画に応募して頂きありがとうございました。




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