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「……あまり、眠れなかった。」
部屋の時計を見ると、そろそろアラームが鳴る時間だった。相変わらずローは男性を抱き枕にしてすぅすぅと寝息を立てている。
「……抱きしめちゃったなぁ。」
男性は呟く。昨夜、衝動的にローを抱き締めてしまったのだ。腕を離そうとすると、顔を真っ赤にしたローの方から抱き締めてくるので、それ以上にローの事をどうにかしてしまいそうだった。その上同じベッドに入り、抱き枕にされるときたものだ。良くぞ我慢したものだと思う。正直言ってローに手を出したら、能力を使ってバラバラにされそうだし、ローはどちらかと言うと女の人のほうが好きだろう。と言っても、男性が男性を好きな訳では無い、女性の方が好きだし、今まで付き合ってきた人もいるみんな女性だ。ローに対する恋愛感情がないと言ったら嘘になってしまうが、あったとしても不毛なだけだ。友人としてローが帰るまで接するべきだと思う。
「しかし、全く起きる気配がないな。」
アラームは男性が起きた時に止めてある。ローの目元の隈からして想像できるが、睡眠が足りてないのであろう。昨日の朝もアラームの時間に起こした後、昼まで二度寝していたのだから好きなだけ寝かしておくことにした。だが、現在の男性はローに抱き締められている状況で、身動きがとれない。せめて腕だけでも離してもらおうとローに声を掛ける。
「ロー起きて。ちょっと離して欲しいんだけど。」
「……嫌だ。」
微かに目を開いたローに拒否される。
「せめて腕だけでも開放してくれないかな。」
ほら、抱き締めてあげるから。そう言えば力が緩んだので腕を引き抜きそのままローの腰に腕を回す。それに満足したようでローの顔が緩み、再び寝息が聞こえた。動悸が激しい。思っている以上に自分はローの事を意識しているようだ。
「……寝れる訳がないんだよな。クソっ、」
誰にでも無く悪態をつく。はあ、と溜息を吐いてすやすやと眠るローの頭に顔を埋める。次に起きた時には普段通りに接しようと心に決めて。




短いですね…。



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