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ーーピピピピピ、ピピピピピ、ピっ

いつもの目覚ましで目が覚める。身じろぐ際の窮屈さに、そういえば昨日はソファで寝たのだと思い出す。しかしいくらソファだと言ってもこんなにも狭かっただろうか。胸元に目線を遣ると、デジャヴュだろうか、胸元には誰かの、多分いや絶対ローのものであろう頭があって、腰には昨日宜しくローの腕が回っている感触がある。
「ベッドで寝たんじゃないのかな?」
その光景に思わず嘆息する。成人男性が二人眠るソファはとても窮屈だ。とりあえずローを起こそうと軽く揺するが、身じろぐ程度で起きる気配はない。仕方ないと腕を外そうとするが余計に力を入れられて逃れられなくなった。はあと息を吐き、耳元で囁く。
「……ロー、朝だよ、起きて。」
すると、ローの目がカッと見開き、耳を押さえながら起き上がった。
「……っ!」
「あ、起きた?いつの間に潜り込んだんだよー。狭くなかった?」
「……別に。まだねみぃ。」
少し落ち着いたからか、眠そうに目を擦るロー。
「まだ眠いの?じゃあ、寝る?」
優しく問うとこくんとローが頷く。死の外科医の面影など微塵も感じられないその姿に、ある筈のない母性本能が刺激される。ソファだと狭いだろうと、寝室のベッドで寝るように促すと、「男性も」と言われる。
「俺も?あんまり眠くないんだけど……。」
「いやか?」
その舌足らずな物言いに負けた俺は、大人しくローに抱かれて二度寝した。


二度寝から起きると時計は正午を回っていて、遅めのお昼ご飯を食べる。まだ少し眠そうなローに声を掛ける。
「ローっていつも起きるの遅いの?」
「……ああ。クルーの誰かが起こしに来るまで寝てる。」
大変だなーと実際に会ったことはないクルー達を労う。だいぶスタートは遅くなったが、今日は大学の図書館に行く予定だった。食べ終わった食器を片付けて着替える。ローにも昨日購入した服の中かもしくは俺の、と男性のクローゼットから服を選ばせると、男性のクローゼットから白シャツとデニムパンツを取り出して着替えた。自分の服なのにローが着ると全く別物に見えるから、イケメンってずるいなあと思う。ちなみに、ローの服は洗濯中だ。男性もいつもの如く、Tシャツとデニムパンツに着替えて、ローと共に大学へとでかける。

大学に着くと、夏休みのせいか学生の数は疎らだ。食堂の前を通ってから、お昼は此処でも良かったかなと思う。医学部の図書館につくと、席に座って何人も勉強している姿が伺える。
「えーっと、ローどんなの読みたい?論文だったら上の階だし、専門書だったら下の階だって。」
この図書館は3階建てで、2階に入口があり、3階に論文雑誌、1階に専門書や一般書があるようだ。
「……専門書だな。」
「ん、分かった。行こうか。」





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