いりますか?そんなの 


あの、キャプテン心臓取り出し事件(シャチ命名)からしばらく経った。あれからローは自らの心臓を取り出して男性に持っていろなんて言うことはなくなったが、その代わり四六時中といっていい程男性の後を着いて回るようになったのは嬉しい誤算だ。しかし、部屋に引き篭もってばかりの不健康そうな生活よりも、多少作業の邪魔━━これはロー本人には言えないが━━にはなるが部屋から出てクルーとの交流が増える方が良い。と思っていたのも束の間、気が付くとローの姿が見えなくなっていた。男性はどうせ部屋にでも戻ったのだろうと作業を続けていると、そこへ何やら顔色が悪いシャチが来て、キャプテンが呼んでいる、と言ってきた。その様子に嫌な予感を抱きながら男性はローの部屋へ向かう。

「ロー、入るよ?」
ノックをしても返事はなく、仕方なく断りを入れながらドアを開ける。おずおずと室内へ足を踏み入れるもローの姿はない。男性は部屋に居ないのかとそのまま出ていこうとした。
「"メス"」
振り返った瞬間胸に衝撃が走り、男性はそのまま意識を失った。

「……っ、」
目が覚めるとそこは相変わらずローの部屋だったが、入ってきた時と違うのは、ベッドに寝かされていることと腹の上に感じる重さ。
「目が覚めたか、男性……」
男性の腹の上に跨っている男、ローは男性を見下ろしながら言葉を発する。
「……ロー?どうした、それっ……!」
どうしたの?そう声を掛けようとしてローの右手にあるものに目を見張る。そこにあったのはどくどくと脈打つ心臓。まさかと思いローを見遣ると、ローの顔は泣きそうに歪み心臓を抱えて蹲る。
「嫌なんだ、男性がおれ以外のやつと話しているのが……笑っているのが……男性はおれのものなのに……。」
そう小さな声で言うローは泣いているのだろう、微かに震えている。嫉妬してもらえるのは嬉しい。しかし、冷静に考えて好きな人の心臓を取ってしまうのはいかがなものか。下手したら死んでしまうのだが?
とりあえずスンスンと泣いているローの頭優しく撫でる。そうしたらすりすりと額を胸元に押し付けてくる。こういう所は可愛らしい。そうしているうちにローの様子が少し落ち着いてきたようなので、何となく想像はつくがこんな事をした理由を聞こうと体を起こそうと腹に力をいれるとローに肩を押し返されてしまった。
「どこに行くつもりだ。」
「起き上がるだけだよ、どこにも行かない。」
鋭い目付きで訴えてくるローに優しく返す。そうすると、ローは素直に腕の力を抜いたので男性は身体を起こしてローを抱きしめた。
「ロー、その心臓俺のでしょ?」
確認のために聞くとローは頷く……やっぱり。
「そっかあ……。ローは俺がハートのみんなと仲良くしないで欲しいの?」
「……仲良くするなとは言わねぇが、おれ以外のやつと男性が話したり、笑ったりしているのが嫌だ……。」
先程も同じことを言っていたし、嫉妬、されているのだろう。もちろん、可愛い可愛い恋人から嫉妬されるのは大歓迎なのだが、ちょっとばかし表現が激しすぎる。
「どうして俺の心臓を取ったの?」
「おれから男性の心が離れても、コレを持ってさえいれば男性はずっとおれのモノにだろう?おれの心臓は受け取ってもらえなかったけど、おれはお前の心臓が欲しい……。」
泣き腫らした目でそう言われても正直どう対応したらいいのか分からない。ローの事だから、心臓を雑に扱うということはないと思うが、心臓を人に預けるという行為が未知すぎる。しかし、ローは簡単に男性の心臓を手放すことはしないだろう。この人は他人に興味が無い癖に、一度でも自分のテリトリーに入った人間にはとことん執着するのだ。ましてや恋人ともなればその執着度は他の人の比ではない。
「……わかった。いいよ。」
ぽんぽんと頭に手を置きながら宥めるようにそう言うと、ローは勢いよく頭を上げる。
「……っ本当か!」
「うん。さすがにずっとって訳にはいかないけど、ローがそれで安心してくれるならしばらくは持っていていいよ。」
でも、大事に扱ってね。微笑みながらそう言えば、ろーは赤く濡れた目をくしゃりと歪めなて当たり前だろと男性の唇にキスを落とした。

「……ありがとう。」
啄むようなキスを何度かして離れていったローは、蚊の鳴くような声で小さく礼を述べた。






お待たせ致しました!!!!
ふみ様「いりませんよ、そんなのと同じ設定のヤンデレなローさん」です。
渡されそうになったら次は奪われる側かな?と安直な考えの結果こんな感じになりました。今回はすこし暗めに……ローさんを泣かせるのが好きなのですぐに泣かせてしまいます……。
色々書き直したりしたので、何かありましたら書き直し承ります……。
気に入って頂けますように。今回はリクエストありがとうございました!




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