騎士は姫君に忠誠を誓う 


※オリジナルの悪魔の実あります



船の上は銃弾が飛び交い、いたるところで金属音が鳴り響いている。
今は敵船で交戦中だ。そろそろ補給が必要だなと思っていた頃に、偶々見かけた海賊船に吹っかけた喧嘩で、今回は久々にローもやる気があり、楽に終われるはずだった。
「なのに、何でこんなことになっているんだろう、ねっ!」
正面から切り掛かってくる敵を薙ぎ払いながら背中を預けているローに問いかける。
「っ、知るか!」
ちいっ、と大きく舌打ちをして、ローも敵を切り伏せる。

その船には能力者が乗っていた。フエフエの実とかいう、自身を量産する能力らしく、倒しても倒しても敵が減らない。
「っ、これ、本人倒さないと、終わん、ないんじゃないっ!」
ただでさえハートの海賊団よりも人数が多いのに、厄介な能力者がのっていたとはツイてない。幸いにもその船のクルー達はそんなに強くないのが救いだが、戦闘の終わりが見えないのはなかなかにキツいものがある。
「今、ペンギン達に探させている。黙って働け。」
静かに、しかし苛立ちを含ませながらローが言う。男性はそれに間延びした返事をして、向かって来た敵を払う作業を続ける。

暫くして、敵の数が減ってきたように感じた。どうやら能力を使えるのは永久的ではないらしい。男性はローから離れて、敵を倒しに行く。
粗方片付いたので、ローの元に戻ろうとすると、マスト上にある見張り台で何かがキラリと反射する。それの正体と目指す方向に気付き、急いで駆け出す。
「ローっ!」
パァンと乾いた音が響き銃弾が発射される。男性はローの腕を引き、反対の手で銃を構える。放たれた銃弾はろーの頬を掠め甲板に穴を開けた。男性は舌打ちすると素早く狙いを定めて引き金を引く。見事にそれは敵の頭部に当たり、見張り台に沈むのが見えた。それと同時に、まだちらほらといた能力者によって生まれていた人間が消えていく。どうやらあれが能力者だったらしい。敵船内で、消えた!とシャチの騒ぐ声が聞こえる。
「……おい。」
「ん?ああ、ごめん。」
掴んだままだったローの腕を離し、残った雑魚は他のクルーに任せて、ローを横に抱きポーラータング号へと戻る。


「男性っ、降ろせっ!」
「いいから、静かにして。」
暴れるローを宥めながら、ローの部屋に向かう。ローを静かにソファへ降ろし、棚を漁る。薬箱を持ってソファの袂に座る。ローの頬の傷にそっと触れると僅かに顔を顰めた。
「ごめん、痛かった?」
「……痛くねぇ。」
傷を綺麗にして、テープを貼る。ついでに、早く治るようにと願いを込めて唇を寄せておいた。
「俺が居ながら、ローに怪我をさせるなんて……」
不甲斐ないと肩を落としていると、くつくつとローが笑う。
「なら、おれから離れるんじゃねぇ。」
差し出された手を取り、甲に口付ける。
「アイアイ、キャプテン。」




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