そのすべてを愛しているのさ 


一つ前の島でこの船に乗ってきた男性は、この世の全てを愛する人間だった。
船長とはいつの間ににか恋仲になっていて、その愛は船長のみに捧げられるのかと安堵したが、人生そう上手く行くはずもなく、未だにその愛は全てに与えられている。
一度男性に聞いたことがある。

「船長の事は愛していないのか」

と、男性は、
「勿論愛してるよ。俺の愛おしい恋人だし。あの蒼い髪も、青灰色の瞳も、不健康そうな隈も、全身に彫られた凶悪な刺青も……そしてペンギン達に嫉妬している時に見せるあの表情も」
ローのすべてを愛しているのさ。
そう男性は笑う。
愛を与える人間の愛はどうやらとても歪んでいるらしい。

そのすべてを愛しているのさ


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