見えた悲劇などマヤカシ 


見えたのは嫌悪に満ちた男性の顔。
伸ばした手は叩き落とされてじんじんと熱を持っている。
「俺、本当はローの事大っ嫌いなんだ……!」

「っつ!」
飛び起きて、そこが闇に満ちた自分の部屋であることを確認して、深く息をつく。最悪だ。夢だと分かっても気分のいいものじゃねぇ。本当の男性はおれにあんな顔を見せない。
何故だか急に不安になって部屋を出る。向かった先は男性の部屋だ。能力を使って音も立てずに部屋に入る。馬鹿みたいにいびきをかいて眠っている男性を見て少し安心する。そして来た時と同じように能力で部屋から出て自室に戻る。

見えた悲劇などマヤカシ


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