精一杯生きてみようかと思った 


ひとしきり泣いた後で、キャスケットの男が、行く所がないならおれ達の船に乗ればいいと言ってきた。
「ね!キャプテン、いいっすよね!」
キャスケットがトラファルガーに同意を求めるも、トラファルガーは駄目だと切り捨てる。途端になんでですかーと不満を漏らすキャスケット。
「船に乗せたところでこいつに何が出来る。戦闘が出来るか?航海術が使えるか?おれ達は遊びで航海をしているんじゃねェんだ。」
その言葉に周囲が静かになる。トラファルガーは当然の事を言っている。何も出来ない素人を乗せたところでデメリットしかない。
しかし、
「俺からも頼む。俺をこの船に乗せてくれないか?」
トラファルガーは男性を厳しい目で見る。
「聞いていなかったのか。お前は何も出来ねぇ。……人が居る島で下ろしてやる。」
「覚える。」
「航海術をか、」
「ああ。」
「戦闘は、」
「鍛える。どんな訓練も惜しまない。」
「……、」
暫く試すように自分を見ていたトラファルガーは一つ溜め息をついた。
「分かった。ベポ、シャチ、お前らが責任持ってこいつの面倒を見ろ。」
「「キャプテン……!」」
「だが、お前なぜ気が変わった。」
死にたかったんだろうが。……確かにそうだ。だけど、何となく、
「せっかくだから、

精一杯生きてみようかと思った
(生まれたからには生きてみよう)
(海賊船だったのは、あとから知った)



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