二本足で立ってみたんだ 


「もう疲れた。」
そう呟いたのは何度目だっただろうか。今回は気が付くと、どこかのビルの屋上の縁に立っていたので、目を瞑って一歩踏み出してみた。
次に目を覚ましたのは、全く知らない森の中だった。寝転がっていたのでそのままでいると、森の茂みから、熊、ではなくシロクマが現れた。とりあえず目を瞑って死んだフリをしてみるも、死んだフリって意味無いんじゃなかったかと後から悔いる。その間にもシロクマは近付いてきて、自分の身体の匂いを嗅いでいるようだ。
「死んでるの?」
シロクマ以外にも誰かいるのか?そのまま動かないようにしていると、身体を持ち上げられた。どこかに連れていかれる。しばらく耐えていると、風と共に潮の匂いがした。浜辺に出てきたらしい。それから再び誰かの「キャプテン!」という声がすると、妙な浮遊感に襲われた。
「ベポ、何拾ってきてんだ。」
「人だよ!森の中に倒れてた。まだ生きてるよ!」
どうやら、先程からの声の主はベポというらしい。シロクマの本来の飼い主に報告しているのか。というか、死んだフリはバレていた。ベポの「はい」という声がすると同時に両足が地につく感じがして、思わず目を開けてしまった。目の前に居たのは、目元に酷い隈を拵えた男だ。男が"ROOM"と呟くと、次は海の上にいた。


二本の足で立ってみたんだ


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