落雷注意報 


恋は雷に打たれたようなものだと言うが、その通りだと今、俺は実感した。
酒場でいつものように女の子を侍らしつつ楽しんでいた俺は、入口が騒がしくなったことに気が付いて、そこに目をやった。同じ格好をした集団の中に一人だけ違う格好をした男に目を奪われた。一目見た瞬間に走った衝撃は忘れられない。すらりとした体躯、もこもこの帽子からはみ出る深い蒼色に隈が目立つ不健康そうな双眸。
「……好きだ。」
思わず漏れた言葉に、両脇にいた女の子が疑問の声を上げる。男性は右側にいた金髪の女の子に声を掛ける。確かこの子はジェシカだ。
「なあジェシカ、アイツって誰?」
「あいつ……?ああ、彼トラファルガー・ローよ。今をときめく超新星のひとりじゃない。」
指をさした方向を見てジェシカが答える。有名人だったらしい。トラファルガー・ロー、その名前を口の中で繰り返す。
「なぁに男性、あなた海賊なんかに興味があるの?」
左側にいた赤毛のアンナが豊満な胸を押し付けながらしなだれれてくる。でもそれどころではないのだ。俺は運命を見つけてしまった。

ジェシカとアンナに謝って席を立ち、トラファルガー・ローがいる集団に歩を進める。俺が近づくと、取り巻き達は訝しげにこちらを見る。俺はトラファルガー・ローの前に立ち名前を読んだ。
「トラファルガー・ローだよな。」
「あ"?」
怪訝な顔をしてこちらを睨みつけてくるトラファルガー・ロー。暗がりでよく見えなかったが、瞳の色は綺麗な青灰色でとても彼に似合っている。その瞳に吸い込まれるように俺は彼の吾子に手を掛け、自らの唇をトラファルガー・ローのそれに合わせてリップ音をたてながらゆっくりと離す。唇も柔らかい最高だ。
「っ、」
「俺、あんたに一目惚れした。好きだ、付き合ってくれ。」
真剣な顔で告白すると、トラファルガー・ローの顔が赤くなっているような気がした。案外初心なのかもしれない。もう一度好きだと伝えると、チャキリと金属音がして世界が反転した。
「は?」
「っふざけんじゃねぇ!だれがお前なんかと!そもそもおれは男だ!」
そう言うとトラファルガー・ローは酒場から出て行ってしまった。全身を襲う衝撃に辺りを見渡すと、バラバラになった自分の身体が目に入る。どうなっているんだ。

あのあと、トラファルガー・ローの取り巻き達もとい、ハートの海賊団のクルー達に、船長に告白するとかスゲーなとか、死ぬほど馬鹿だとか褒められているのか貶されているのか分からない声掛けをしながら身体をくっつけてもらった。どうやらトラファルガー・ローは悪魔の実の能力者で、身体がバラバラになったのも能力によるものらしい。爆笑している彼らを尻目に酒場の外に出ると、離れた所を歩くトラファルガー・ローを見つけたので本気の旨を叫ぶと、こちらを一瞥したあと、トラファルガー・ローが消えた。悪魔の実は瞬間移動もできるらしい。
仕方がないから酒場に戻って、いつまで居るのかクルーに聞くと、一週間は居るらしい。それだけあれば充分だ。俺はどうやったらトラファルガー・ローが落ちるのかじっくり考えることにした。まあ、反応を見る限りじゃそれも時間の問題だろう。




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