「あ・・。」
久しぶりに夏日となった日、ミカルは店先の掃除や整理整頓などをしていた。
午前は飲み物を買いに来る人も多かったが、午後は日差しも強く人があまり来ない。
ふと入口に足音を感じたので振り向くと、陽に透けてキラキラと輝く髪色が見え
そこに立っていたのは、クラウドだった。
「働き者だな。」
「ふふっ・・・まぁね。仕事の最中?」
「ティファの店に行く途中だ。」
表情は読みづらいがきっと笑顔を向けてくれたんだろうとミカルは感じた。
「そう。あ、じゃあついでにこれ持って行ってほしいな〜・・ってこれも報酬必要になる?」
伺うように見上げるミカルに小さく首を振った。
「いや、ついでだからな。持ってくよ。」
「ありがとう!じゃあ、これサービス。」
そういってミカルは冷えた飲み物をもう2本クラウドに渡した。
「そういえば・・・大丈夫なのか?神羅がどうとかバレットが騒いでいたが」
飲み物と荷物を受け取りながら、クラウドは尋ねた。
「あぁ、祝賀会でのピアノ演奏ね。演奏するだけだし、引き受けちゃった。バレットたちには言わないでね、すごく心配するだろうし。」
さして気にしてないという雰囲気で、ミカルは近くにある段ボールを畳んでいた。
「そうか・・なにかあったら呼べよ」
面倒なことには関わらないでいた自分が、なぜミカルに対してこんな風に言ったのかはわからなかった。
「わかった。ありがとう。」
「ミカル?」
「あ、ラディさん。」
店の奥からラディと呼ばれた女性が出てきた。
褐色の肌が良く映えるタンクトップを着て、コーンロウのヘアが良く似合う女性だった。
「クラウドだよ。ティファの幼馴染で、なんでも屋さんなの。配達とか頼めちゃうかもね!」
クラウドを見て、一瞬笑顔が強張ったがすぐにまた笑顔になった。
「いらっしゃい、ミカルがお世話になってるみたいね。」
「いや・・。ミカル、また来る」
そういってクラウドは店を出て行った。
「あの瞳の色・・」
ラディはユアンと共に退団する前のことを、そして同じ色の瞳をした男のことを思い出した。
ソルジャー・クラスファーストと呼ばれる中でも、更にエリートだったその男は
長い銀髪が印象的な美しい見た目をしていた。
でもどこか、冷たい印象を受けたあの瞳の色だ。
英雄と呼ばれた男。
「不思議な目の色だよね。綺麗だけど」
そういってミカルは再び店の整理整頓をしだした。
ラディはなんとなく、胸騒ぎを抱いた。